ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

真の失業率──2012年4月までのデータによる更新

※追記を追加しました。(06/05/12)

 完全失業率は、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発生することで、雇用情勢の悪化を過小評価することがあるが、この効果(就業意欲喪失効果)を補正し推計した「真の失業率」を、最新のデータを加えて更新した。*1

 真の失業率は、1月までは横ばいであったが、その後は緩やかに低下している。これは、公表されている完全失業率が上昇傾向にあることと対照的である。ただしこの間、就業者の減少および非労働力人口の増加は継続しており、就業意欲喪失効果は引き続き継続している。
 現在、雇用情勢は極めて判断の難しい状況で、例えば、産業別の就業者数をみると、建設業、医療、福祉などで増加しているが、製造業や卸売、小売業では大幅な減少となっている。復興需要や高齢化の進展は、特定の産業の雇用の増加につながるが、円高は製造業の雇用を縮小させ、好調な消費も、消費者物価や国内需要デフレーターのマイナス幅を縮小することにはつながっているものの*2、関連産業の雇用を増加させるまでには至っていない。

(追記)

 製造業雇用と円高の関係について補足すると、今回2010年以降の円高局面をみていてよくわかったのだが、大手の製造業では、決算発表(一般的には6月だが、近年は四半期ごと)にあわせて中期経営計画を策定するため、この発表後数ヶ月〜数年を経過して後、中小の下請企業等との契約の見直しや、派遣・請負労働者の規模の適正化を図ることになる。今回の円高は、2010年半ば頃に始まるが、これが一時的なものではないと企業経営者が判断すれば、中期経営計画を見直し、その後しばらくして離職者が発生することになる。現在、家電業界等でみられる雇用リストラの動きは、現下の為替相場に左右されたものではなく、1年以上にわたって継続している円高傾向によって引き起こされたものだと考えるのが妥当である。

 円高の原因については、金利の動き、厳しい雇用情勢等を考えれば、国内経済で財政支出によるクラウディング・アウトが生じるような状況ではなく、マンデルフレミング効果でそれを説明することには相当の無理がある。金融政策に関していえば、一時的な量的緩和は、理屈からすれば、「物価水準」に影響はあっても「物価上昇率」に一時的ではない影響をあたえるとはいえず、継続的な緩和姿勢(特に、時間軸政策)が重要になってくる。
 ちなみに、6月4日の日経経済教室では、猪木武徳氏が、金融政策と物価の関係について論じており、経済のデフレ期待が強いもとで、中央銀行に過度な対応を求めることの問題点が論じられ、金融政策には複数の目標があり、政策手段も複数あることから、目標価値の相克、分配をめぐる争いの対象になりやすいことが指摘されている。

*1:通常は2011年の年齢階級別均衡労働力率を推計し、2011年1月まで遡って真の失業率を改訂することとしているが、震災の影響による年次データの不足があるため、今回は改訂を行わず、2012年1月に2カ年分を遡って改訂することとする。

*2:ただし、交易条件が悪化していることから、GDPデフレーターは当面、マイナスが続くものと思われる。