ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

真の失業率──2016年6月までのデータによる更新

 完全失業率によって雇⽤情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発⽣することで、完全失業率が低下し、雇⽤情勢の悪化を過⼩評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる⽅法で推計した「真の失業率」を最新のデータを加えて更新した。

6⽉の完全失業率(季節調整値)は3.1%と前年同⽉から0.1ポイント低下、真の失業率も3.3%と前年同月から0.1ポイント低下した。真の失業率は、引き続き、減少基調である。なお、インフレ率が低下する中で完全失業率は改善していることから、フィリップス・カーブはこのところ逆相関の動きとなっている。

 所定内給与と消費者物価の相関に関する5⽉までの結果は以下のようになる。賃⾦は4⽉以降、これまでの増加傾向から一転して減少に転じている。

その原因を素直に判断すれば、フルタイム労働者の所定内給与が伸び悩んでいることから、本年度の春闘におけるベースアップが低かったためということになる*1。ただしこれについては、新卒を含むフルタイム労働者の増加が続いており、相対的に賃金水準の低い雇用者の割合が高まったためとの見方もある*2

 最後に、今回は貿易サービス収支と名目実効為替レートの関係をみておきたい。

グラフからわかるように、リーマン・ショック後の時期を除いて長期的にみると、為替レートは貿易サービス収支に連動し、いわば内外経済の価格調整メカニズムの役割を果たすように動いている。よって現下の円高傾向は貿易サービス収支のプラス傾向と連動したものであり、金融政策が中立である限り、当面、その傾向は変わらないようにみえる。円高は輸入物価の下落を通じ消費者物価に下押し圧力として働くため、このところの物価の停滞は、しばらくは変わらないとの見方ができそうである。
 このことはいずれにせよ、日銀の金融政策目標が実体経済へ浸透する上での障害になるだろう。一方、このところの日銀は家計調査と異なる個人消費の指標をつくる等*3、まるで金融政策の効果が上がらないことを統計のせいにしようとしているようにもみえる。このような姑息な対応をしているようでは、組織として、各種経済主体のインフレ予想に影響し今後の経済動向を左右する目標を設定することは、もはや不可能なのではないだろうか。

https://dl.dropboxusercontent.com/u/19538273/nbu_ts.csv

*1:連合の集計結果によれば、昨年度と比較可能な組合について、賃金引上げ率のうち定昇相当分を除く分(賃上げ分)は本年度0.32%増と昨年度の実績(0.56%増)を下回る。:http://www.jtuc-rengo.or.jp/roudou/shuntou/2016/press_release/press_release_20160705.pdf?0706

*2:https://twitter.com/m_takaharasan/status/756339411441192961

*3:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS02H5Z_S6A500C1EE8000/