備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

真の失業率──2019年10月までのデータによる更新

完全失業率によって雇用情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発生することで完全失業率が低下し、雇用情勢の悪化を過小評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる方法で推計した「真の失業率」を最新のデータを加えて更新した。

10月の結果をみると、完全失業率(季節調整値)は2.4%と前月と同水準となったが、真の失業率は1.2%と前月から0.1ポイント低下した。引き続き、真の失業率は減少基調である。現推計時点において、真の失業率は基準年*1である1992年より改善していることとなる。

所定内給与と消費者物価の相関に関する9月までの結果は以下のようになる。サンプル替えの断層により、一般労働者の特別給与が減少、パートタイム労働者比率が上昇したことで、賃金は1月に大きく減少したが、その後は物価・賃金ともに上昇基調に回復した。

(参考エントリー)

(真の失業率のデータ(CSV)が必要な方はこちらへ)
https://www.dropbox.com/s/fixt1abitfo58ee/nbu_ts.csv?dl=0

*1:本推計において完全雇用が達成しているとみなす年。

真の失業率──2019年9月までのデータによる更新

完全失業率によって雇用情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発生することで完全失業率が低下し、雇用情勢の悪化を過小評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる方法で推計した「真の失業率」を最新のデータを加えて更新した。

9月の結果をみると、完全失業率(季節調整値)は2.4%と前月から0.2ポイント上昇したが、真の失業率は1.3%と前月から0.1ポイント低下した。引き続き、真の失業率は減少基調である。現推計時点において、真の失業率は基準年*1である1992年より改善していることとなる。

所定内給与と消費者物価の相関に関する8月までの結果は以下のようになる。サンプル替えの断層により、一般労働者の特別給与が減少、パートタイム労働者比率が上昇したことで、賃金は1月に大きく減少したが、その後は物価・賃金ともに上昇基調に回復した。

(参考エントリー)

(真の失業率のデータ(CSV)が必要な方はこちらへ)
https://www.dropbox.com/s/fixt1abitfo58ee/nbu_ts.csv?dl=0

*1:本推計において完全雇用が達成しているとみなす年。

真の失業率──2019年8月までのデータによる更新

完全失業率によって雇用情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発生することで完全失業率が低下し、雇用情勢の悪化を過小評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる方法で推計した「真の失業率」を最新のデータを加えて更新した。

8月の結果をみると、完全失業率(季節調整値)は2.2%と前月と同水準となったが、真の失業率は1.4%と前月から0.1ポイント低下した。引き続き、真の失業率は減少基調である。現推計時点において、真の失業率は基準年*1である1992年より改善していることとなる。

所定内給与と消費者物価の相関に関する7月までの結果は以下のようになる。サンプル替えの断層により、一般労働者の特別給与が減少、パートタイム労働者比率が上昇したことで、賃金は1月に大きく減少したが、その後は物価・賃金ともに上昇基調に回復した。

(参考エントリー)

(真の失業率のデータ(CSV)が必要な方はこちらへ)
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*1:本推計において完全雇用が達成しているとみなす年。

真の失業率──2019年7月までのデータによる更新

完全失業率によって雇用情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発生することで完全失業率が低下し、雇用情勢の悪化を過小評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる方法で推計した「真の失業率」を最新のデータを加えて更新した。

7月の結果をみると、完全失業率(季節調整値)は2.2%と前月から0.1ポイント低下、真の失業率も1.5%と前月から0.1ポイント低下した。引き続き、真の失業率は減少基調である。現推計時点において、真の失業率は基準年*1である1992年より改善していることとなる。

所定内給与と消費者物価の相関に関する6月までの結果は以下のようになる。サンプル替えの断層により、一般労働者の特別給与が減少、パートタイム労働者比率が上昇したことで、賃金は1月に大きく減少したが、その後は物価・賃金ともに上昇基調に回復した。なお、毎月勤労統計の8月26日付けの改訂を踏まえ、今回、賃金のデータを過去に遡って改訂した。

(参考エントリー)

(真の失業率のデータ(CSV)が必要な方はこちらへ)
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*1:本推計において完全雇用が達成しているとみなす年。

苅谷剛彦『オックスフォードからの警鐘 グローバル化時代の大学論』

英語圏の大学ランキング上位に位置する主要大学は、リアルな国際競争に晒されているのに対し、日本の大学は、その教育が国民国家の閉じた「内部」で行われている以上、「想像上の」国際競争を行っているに過ぎない。そうした中、ランキング上位を目指す日本の大学の誤ったグローバル化戦略に対し警鐘を鳴らす。

世界全体で留学生が増加しているが、その起因となっているのは中国からの流出学生の増加である(本書の終章でデータをもとに説明)。また、日本人であれば、日本の大学で、最先端の学問を日本語の文献で学ぶことができるのは当たり前のように考えるが、ヨーロッパの辺境の国などでは条件が大きく異なる。こうした中、大学教育が産業化し、優秀な学生の獲得競争に晒される英語圏の大学を日本の大学と単純に比較することはできない*1

英語圏の高等教育を受けた者の強みは「どこでも(Anywhere)行ける」*2ことであり、BPがホームページに掲載した表現に、「グローバル化されたメリトクラシー」とはいかなるものか、率直に表現されている。

 私たちの目的は、グローバルなメリトクラシー能力主義)をつくりあげることです。そこでは、あらゆるバックグラウンドを持った人々が歓迎される。若者、年配者、男性、女性、いかなる人種や国籍を問わず、身体的な能力によらず、宗教、さらには性的嗜好や同一性を問わずに。

一方で、日本人のほとんどは、高学歴者を含め「そこに(Somewhere)留まる」者であり、「どこにでも行ける」者は少数派に過ぎない。格差を伴いながら皆が同じように衰退を経験するが、沈みかけた船の救出に全員で立ち向かうことも可能であるとする。

*1:特に、自然科学系の学問以外の分野において。

*2:FTに掲載されたBrexitをめぐるエッセイ『どのように私はロンドン部族を離れたか』の分析枠組みによる。

真の失業率──2019年6月までのデータによる更新

完全失業率によって雇用情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発生することで完全失業率が低下し、雇用情勢の悪化を過小評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる方法で推計した「真の失業率」を最新のデータを加えて更新した。

6月の結果をみると、完全失業率(季節調整値)は2.3%と前月から0.1ポイント低下したが、真の失業率は1.6%と前月と同水準となった。引き続き、真の失業率は減少基調である。現推計時点において、真の失業率は基準年*1である1992年より改善していることとなる。

所定内給与と消費者物価の相関に関する5月までの結果は以下のようになる。サンプル替えの断層により、一般労働者の特別給与が減少、パートタイム労働者比率が上昇したことで、賃金は1月に大きく減少したが、その後は物価・賃金ともに上昇基調に回復した*2

(参考エントリー)

(真の失業率のデータ(CSV)が必要な方はこちらへ)
https://www.dropbox.com/s/fixt1abitfo58ee/nbu_ts.csv?dl=0

*1:本推計において完全雇用が達成しているとみなす年。

*2:2018年11月分結果確報より、毎月勤労統計の所定内給与は、東京都の500人以上規模の事業所分を復元して再集計した値(再集計値)に変更された。当ブログでもこれを取り込み、数値が存在しない2011年以前の指数については、従前の集計値に2012年のリンク比(再集計値/旧集計値)を乗じた値とし、季節調整値を算出した。

藤原正彦『遙かなるケンブリッジ ―数学者のイギリス―』

遥かなるケンブリッジ―一数学者のイギリス (新潮文庫)

遥かなるケンブリッジ―一数学者のイギリス (新潮文庫)

本作品は1991年10月に刊行。筆者は数学者でエッセイストの藤原正彦で、当時は40代半ば、3児の父である。筆者の父は小説『武田信玄』で知られる小説家で気象学者の新田次郎。母もまた『流れる星は生きている』で知られる小説家の藤原てい。筆者は満州出身で、『流れる星は生きている』の中には、母子での満州からの引き揚げの様子が綴られている。
藤原正彦と言えば、数学者としてよりも、2005年にベストセラーとなった『国家の品格』によって世に知られているのではないかと思う。個人的には同書は未読で、むしろ同書の印象から、これまで藤原正彦の作品一般に対し拒否反応を持ち続けてきた。本作品でも、「武士道精神」というより「島国根性」といってよいような筆者の反応が随所に現れるが、今になって読んでみると、その「真面目さ」がむしろユーモアとなっているように捉えられた。一方、ケンブリッジの学者等との会話に現れる筆者の教養の深さは素晴らしく、また「回転の速さ」に感心させられる。

恰好のガイドブック

本作品の白眉は、筆者を取り巻く人々についての、その心理に迫るような描写にあるように思う。結果的に、イギリス人やケンブリッジの人々の気質を理解する上で、極めて実践的な作品に仕上がっている。この間、筆者は1年間の長期在外研究員として過ごしたわけだが、その短い期間に、大学のみならず地域や子供が通う学校の関係者とも深い人間関係を築いている。
フェアーであることに対するイギリス人独特の捉え方、「イギリス・ユーモアの根底には無常感がある」とする見方など、類書にない深さを感じる。また、イギリスの階級社会とロウアー・クラスの人々が持つエリート層への複雑な感情なども分かりやすく伝わる*1
何れにしても、筆者の人間観察眼の鋭さが歴史観や教養の深さと相まって、国民、国家や制度に対する深い理解につながっている印象を持つ。

ケンブリッジ大学については、大学が発行するProspectus等を読んでも理解できないようなことを含め、日本人の常識を前提とした恰好のガイドブックとなり得ているように思う。UniversityとCollegeの違いは、日本の大学を基準に考えても理解できないが、本作品の第5章の最初に、その違いが簡潔にまとめられている*2。大学が国立である一方カレッジは私立であること、カレッジは学生の生活面に関わるとともにスーパービジョンと呼ばれる教官の個別指導を通じ教育にも関わること、カレッジの排他性やカレッジ間の競り合いなどは、他書からは得られない知識である。筆者が行ったスーパービジョンの様子や、学生にとって唯一の試験であるトライポス、取り分け、大学入試に借り出された際のインタビューの様子には興味を引かれる。

 面接は各人につき三十分ずつ行われた。合否はこの面接と、内申書やAテストと呼ばれる国家試験の結果を半々に見て決定する。この大学で再重視されるのは、自ら学んでいく意欲と能力である。質問内容は専門的なことから読書傾向や友人関係まで及んだ。教科書に出ていない事を臨機応変に聞いた。(中略)

数学では基本をよく理解していない者も散見されたが、どの内申書にも抜群と記してあったのは、日本と同じでおかしかった。(中略)

 一人だけ凄いのがいた。まだ十六歳のインド人だった。葬式帰りのような、黒スーツに黒ネクタイだったが、どんな質問にも的確に答えた。少し困らせてやろうと、やや意地悪な問題を出したら、ものの十秒位で解いてしまった。ノーベル賞を数十人も出す大学にはこんな生徒が来るのか、と感心していたら、グリーン博士が、「やったぜ」とでも言いたい気に私に目配せした。(中略)

 試験後、グリーン博士に、気になったことを二つ尋ねてみた。一つは、願書にあった、「親戚中のオックスブリッジ出身者」なる欄の使われ方だった。彼は、それが合否に影響することはクイーンズではあり得ない、と強く否定した。もう一つは、合否判定時に私立と公立が同等に扱われるのか、という疑問だった。
「同等ではありません。もし類似した成績なら公立学校出身者をとります。教官、設備、家庭などではるかに恵まれたパブリック・スクール出身者が、優位にあるのは当然だからです。条件の違うものは区別するのが、公平と考えるからです」
 日本の入試における公平とは、ずい分違うものだと感心した。

日本の大学は未だローカルな存在に止まる一方、ケンブリッジ大学を含む世界の主要大学は、世界中から優れた学生を採るため、さまざまな努力をしているという印象がある。本作品に描かれた入試の様子からも、日本の学校との(特に入試において「マジックが働く」とされる某校との)そうした違いは感じられる。

*1:ただし、「イギリス病」の原因を「イギリス人気質」に求める第12章の内容に関しては、定義が曖昧で、必ずしも論理的な説明となり得ていない。

*2:イギリスには大学入学前の生徒が通う”…College”と名の付く学校もあるので、言葉の意味がこれだけで理解できるという意味ではない。