備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

藤本幸彦「不動産証券化における税務上の論点」(ARES)

■不動産売却の取扱い

  • 金融資産以外の資産のオフバランス取引について、税務上、明文の規定はない。一般会計上の「リスク経済価値アプローチ」により、不動産がSPCに対して適正な価値で譲渡され、不動産に係るリスクと経済価値がSPCを通じて他の者に移転されている場合*1、(原則的には)売却取引と認められる。

■不動産のセールアンドリースバック取引

  • ファイナンス・リース取引の法人税法上の定めは、解約不能、フルペイアウト*2を条件とするリース会計基準に定めるファイナンス・リース取引の定義とほぼ同一。土地・建物等のファイナンス・リース取引は、広告用の構築物等移設が比較的容易に行い得るもの、リース終了時に賃貸人に返還されることが明らかなものを除き、売買として取り扱われる。
  • 譲受人から譲渡人への賃貸を条件に資産の売買を行った場合、実質的に金銭の貸借であると認められる場合は、売買はなかったものとし、譲受人から譲渡人への金銭の貸付として取り扱われる。(オペレーティング・リース取引の場合はこの限りではない。)
  • 譲渡した不動産に減価償却資産が含まれる場合、譲渡人は当該資産について所有不動産として減価償却を行う(当該事業年度に償却費として損金経理)。金銭の貸付とみなされた場合、リース料のうち元本返済額に相当する部分は、償却費として損金経理した金額に含む。

■不動産の譲渡時ならびに譲受人に譲渡された不動産の賃貸料に係る源泉税

証券化スキームにおける不動産信託の取扱い

  • 信託財産に帰される収入・支出については、税法上、(別段の定めがある)但書信託*3を除き、受益者が特定している信託は導管として扱われる*4。信託導管理論に基づき、昭和61年に「土地信託通達」が公表され、一定の要件を満たす「土地信託」の取扱いを規定。

*1:譲渡人のリスク負担割合が概ね5%以内。

*2:リース料の合計額が資産所得価格+付随費用と概ね一致。

*3:集団投資スキーム及び特定信託。

*4:受益者が特定していなければ委託者に課税。