橘玲「マネーロンダリング入門 国際金融詐欺からテロ資金まで」
マネーロンダリング入門―国際金融詐欺からテロ資金まで (幻冬舎新書)
- 作者: 橘玲
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2006/11/01
- メディア: 新書
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証券取引所から公表されている投資部門別株式保有金額 では、近年、「外国人」の比率が急速に拡大し、金融機関の割合にも迫る勢いである。本書では、こうした外国人投資家の多くは国内資金(海外に設置されたペーパーカンパニー等からの投資)である可能性を指摘する。ちなみに、下のサイトは、企業の主要株主に名を連ねる外国法人の正体等不良投資家たちの実態を分析する等充実した内容。
著者は、国家や会社に依存しない「経済的独立」を究極目的と考えており、「永遠の旅行者」という魅力的な生き方を紹介するが、「経済的独立」が可能となるのは、社会の上澄みのほんの一部であろう。多くは、(仮に「経済的独立」が可能であっても)国家や会社に依存し、経済的に独立した場合以上の利得を得ている。あとがきにおける以下のような著者の考え方は、魅力的ではあるが、現実の選択肢としては無条件に賛同することは出来ずにいる。
小泉改革の規制緩和によって日本は「格差社会」になったといわれる。その歪みを修正するためにも、相続税率を引き上げるなど富の再分配を強化すべきだと一部の論者は言う。この現状認識に異論はない*1が、税率引き上げは平等な理想社会の実現ではなく、社会のさらなる階層化をもたらすだろう。
村上ファンドの村上世彰氏がシンガポール移住を目指したように、税金を払いたくない人はいつでも日本から出ていくことができる。増税は富裕層には何の痛手も与えず、仕事や家庭を抱え、この国で生きていくほかない中間層を痛めつけるだけだ。*2それは控えめに言っても、かなり暗い社会に違いない。
いつの時代でも、理想や正義を声高に語る人の後をついて行くとろくなことはない。この本に書いたのは、例えば、そんな単純な心理である。