フリードリヒ・A・ハイエク「自由の条件[1] 自由の価値」(3)
- 作者: F.A.ハイエク,矢島鈞次,Friedrich August von Hayek,気賀健三,古賀勝次郎
- 出版社/メーカー: 春秋社
- 発売日: 2007/08/01
- メディア: 単行本
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とりあえずの感想
ハイエク全集新版の第1期第1回配本。「隷従の道」において展開された全体主義への批判と自由への信条表明が、改めて展開されている。
規則に従うことは、個人を目的とする自由主義の考え方に通じ、個人の自由を制限しても社会の目的を重視する「便宜主義」とは異なるが、これらが同じ社会目的の下で両立し得ることは、後の議論に混乱をもたらしている。ハイエクの考える自由は「強制からの自由」として、消極的に定義されるものであり、自由は、それ自体が目的であり、何らかの目的のための手段ではない。
また、民主主義に内在する「多数者の専制」の問題など、自由主義の立場からの重要な正論が提示される。しかしながら、個別の論点を現代日本の文脈にあてはめることには、相当の無理も感じられる。特に例えば、文化的価値に対する富裕者の貢献などは、日本において一般的にみられるものではない。
自生的秩序としての市場や、所得再分配についての見方など*1は、深く吟味すべき論点であると思われる。
*1:第3部の内容に関する01/10/08付けエントリーを参照。