備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

河野稠果「人口学への招待 少子・高齢化はどこまで解明されたか」(2)

人口学への招待―少子・高齢化はどこまで解明されたか (中公新書)

人口学への招待―少子・高齢化はどこまで解明されたか (中公新書)

第5章 生殖力と出生率−生物的・行動的「近接要因」

  • 人口学では、出生力を、人間の生殖をめぐる生物的、行動的要因である「近接要因」と、その背景にある「社会・経済・環境的変数」の2つの要因で考える。ボンガーツは、(1)結婚、(2)永久不妊の始まり、(3)産後の不妊、(4)自然的受胎確率・性交頻度、(5)避妊法の使用と効果、(6)子宮内胎児死亡、(7)人工妊娠中絶、の7つの近接要因を考え、特に、(1)(3)(5)(7)を重視。

第6章 結婚の人口学−非婚・晩婚という日本的危機

  • 出生率への非婚・晩婚の影響。非婚・晩婚化の要因として考えられる、男性と女性が求める結婚の条件の違い、恋愛結婚市場の発達不全など。(略)

第7章 出生率低下と戦後社会−五つの社会経済的理論

第8章 出生率の予測−可能性と限界

  • 出生率に影響を与えるとされる社会経済的変数の効果は、ミクロ分析の多変量解析では意外に小さく、出生率の推計には役立たない。人口推計と経済推計が一体となるシステム的なものが構想されるが、現在の段階では、そこまで発達していない。

第9章 将来の人口推計−未来をよむ人口学

終章 人口減少社会は喜ばしいか

  • 人口減少ウェルカム論の基底にあるのは、人口減少が豊かさの要因になり得るという思想。人口と平均所得との関係は中立的。日本の労働生産性は低く、サービス産業、流通部門など、その向上の余地はまだ十分にある。一方、大淵寛は、一国の総生産が持続的に減少する場合、人々は経済活力の低下を肌身に感じ、将来への不安や不透明感を覚えると指摘。
  • 人口減少が、(ペストの蔓延を経験した)中世の欧州の場合のように、日本社会の改革に対して貢献するのであれば、ある意味では歓迎すべきこと。いかなる時代でも、経済が不況の時代には出生率は上昇しない。