備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

小田嶋隆「大日本観察」(週刊ビジスタニュース)より

 警察庁のまとめによれば、高齢者の刑法犯検挙人員が昨年までの10年間で3.6倍に急増している――のだそうだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20071214AT1G1304Y13122007.html
おお、やはりそうだったか。膝を打ちましたよ。あまりにも個人的な印象と一致する話でしたから。

(中略)

 が、続報は無い。新聞は、警察発表をリークしてそれでおしまい。どうやら、一歩踏み込んだ分析記事を提供しようという気持ちは持っていないようだ。週刊誌が後追い取材をしている気配もない。各局ワイドショーの新聞読み上げコーナーも知らん顔――つまり、彼らは黙殺しているわけだ。
 お役人が酔っ払い運転をやらかしたとか、どこかの大学教授がセクハラで告発されたとか、少年犯罪の凶悪化が……みたいなお話については、番組付きのコメンテーターに手持ちの警鐘を乱打させながらの大報道を展開しているのに、高齢者犯罪はシカト、と。結局、テレビは、マジョリティのメディアで、要するに、主たる視聴者層である宅内老人の皆さんにアピールしないタイプのニュースについては、あんまり熱心に報道しない、と、そういうことなのか?
 もっと深読みすれば、テレビをはじめとするマスメディアは、最大の顧客である団塊の世代に対して、これまで、数十年にわたって、一貫して媚びを売り続けてきたのである。*1

 メディアは、政治的に、弱者(と世間に認識されている人達)を批判することができない。また、社会の多数を占める「団塊の世代」を批判することは、市場が許さない。今後は、「団塊の世代」が退職し、高齢者の数はさらに大きくなる。「多数者の専政」のような事態が、さらに深刻化することが懸念される。これらを考えると、言論における政治性を弱め、科学的、あるいは学問的な見地に立った言論を尊重するような風土を、今から創り上げておくことが必要なのではないか。
 とはいえ、科学的、あるいは学問的な議論をする上での前提となる社会的な価値ぎめをする際には、深刻な利害の対立が派生することも、あるとは思われる。

*1:強調は、引用者による。