今年の10冊
恒例のエントリーです。以下、順不同で。
4.王城夕紀『青の数学』/『青の数学2 ユークリッド・エクスプローラー』
- 作者:王城 夕紀
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2016/07/28
- メディア: 文庫
ネット上の数学対決という設定は、競技プログラミングのコンテストを思わせるし、夏の合宿のシーンは、「数理の翼」と数学オリンピックの春合宿を混ぜ合わせた設定っぽい。「数学にたった一人で臨んでいるのが、自分一人ではないと知るためだ」「まったくの無意味に見えるものにも、意味を、秩序を見つけようとするのが、数学だからです」といった言葉は印象的。
5.結城浩『数学ガール ポワンカレ予想』
シリーズ6年振りの新作。テーマはトポロジーだが、ε-δ、多様体、調和解析などの分野にも話が及ぶ。設定は受験直前の短い期間。完成度、レヴェル感的には第1作ないし第2作(フェルマーの最終定理)に近い印象。ここまで全6作をみると、最終章が難解な第3作(ゲーテルの不完全性定理)及び第5作(ガロア理論)、その間に第4作(乱択アルゴリズム)があり、それを挟み対称的になっている印象。
6.加藤文元『ガロア 天才数学者の生涯』
第6章でガロア1830年の論文の序文を全訳。ここで述べられる〈難しさによる分類〉、あるいは死の前年に書いた遺書に登場する〈曖昧の理論〉という言葉は、ガロアが「代数方程式のガロア理論」にとどまらず、「微分方程式のガロア理論」、さらには現代数学における他の類似の理論を含む広大な〈ガロア理論〉の地平に、すでに深遠な第一歩を踏み台していたことを暗示するものだ、としている。
7.久賀道郎『ガロアの夢 群論と微分方程式』
前書で紹介されていたので読んでみた。東大教養で行った講義の記録とのこと。Lie群や微分方程式の可積分性あたりに近い印象で読んでいたが、そればかりではなさそう。大学に居た時分に読んでおきたかった。
8.藤原彰夫『情報幾何学の基礎』
- 作者:藤原 彰夫
- 出版社/メーカー: 牧野書店
- 発売日: 2015/08/01
- メディア: 単行本
夏期休暇中の「課題図書」として購入。第5章の途中で止まったままだが、それなりに理解はできた印象。第8章まで読めたら、他のことにも活かせる理解ができそう。
10.野矢英樹『入門!論理学』
命題論理、述語論理の基本とその限界について、ユーモアを交えながら、わかりやすく解説。日常的な話し方と命題論理では異なるニュアンスを持ちがちな点についても触れ、命題論理の射程の限界から、それを解説する。一方、(ネット言説にありがちな)論理を武器に他者の言説を小馬鹿にする向きは一切ない。受験国語において論理力を高める趣旨から読むのであれば、この本よりも、むしろ実践的な本(論理トレーニング等)の方が適切か。