ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

横田由美子『なぜ名門女子高の卒業生は、「ひと味」違うのか!』

なぜ名門女子校の卒業生は、「ひと味」違うのか!

なぜ名門女子校の卒業生は、「ひと味」違うのか!

 御三家、新御三家など、中学受験のいわゆる最難関校、難関校に位置する女子高について、学校別に、卒業生や学校関係者へのインタヴュー等を通じ、学校の魅力や今後の可能性を探りたいという意欲を感じさせる書。景気が拡張傾向にあり、(以前のエントリー*1で指摘したように)「先の見えた」中高年サラリーマンが増え、さらには、6年後に迎えるセンター試験の廃止など教育改革の動きに親たちが不安を覚える中、中学受験は再びブームとなっているようで、学習塾業界の盛況は肌感覚としても感じられる。さらには〈成長戦略のカギを握るのは「女性」〉などと指摘されている中、本書は、まさに「時宜を得た」出版企画である。
 著者は、『私が愛した官僚たち』など、以前は官僚や政治家を題材としたノンフィクション作品を多数書いていたと記憶している。ポピュリズム張りに世間受けを狙う官僚・政治家批判本とは一線を画し、時に愛情すら感じさせる筆致で、個人の内面をも描く作品という印象を持っていた。近著では、『政治家・官僚の名門高校人脈』(光文社新書)という作品がある。本書も、同書の流れを一部汲んでいるが、学校関係者、特に校長のインタヴューを通じ、「人間」よりも「教育」そのものにやや重心を移しているように感じる。

 取り上げられている学校は、桜䕃、鴎友、洗足、吉祥、雙葉の5校。この中では、いわゆる新御三家に位置づけられる鴎友、洗足、吉祥が、類書が少なく情報が少ない中、有益な情報源となり得ていると思われる。(類書としては、おおたとしまさ氏がダイヤモンド社から出している『中学受験 注目校の素顔』シリーズがある。)
 一方で、この5校の選択基準は必ずしも明確ではない。女子学院の取材ができなかった経緯は「はじめに」で触れられているが、豊島岡、フェリス、浦和明の星など、最難関校、難関校の受験を目指す親であればぜひ知りたいと思うであろう女子高が抜けている点には、やや不満も残る。

 本書を通じ改めて感じたことであるが、私立中高一貫校の「魅力」は、その歴史や伝統、卒業生の多様さにもよるのだろうが、校長によっても結構左右されるのではないかと思われる。本書では、鴎友の吉野校長、洗足の前田校長が登場しているが、このお二方は、自分も学校説明会などで直接話を聞き、それぞれ話の力点は異なるものの、話す内容は興味深く、それにも増して人間的な魅力に溢れているように感じられた。また、別の学校では、話の内容は例年のものとそれほど変わらないものの、人間的なオーラを存分に感じさせる校長もいた。そうした中で最も印象に残るのは、本書では取り上げられていない浦和明の星の島村校長であり、あのときの「衝撃」は忘れがたいものである。

 本書でとりわけ詳細に記述されている猪口邦子参議院議員については、著者ならではの人物像の描き方である。マスコミやネットで面白おかしく描かれる政治家であるが、人間の「大きさ」を正しく認識するためは、こうした文章を読む必要があると改めて感じる。最後の「おわりに」では、日本の近代以降の女子教育についての著者の私見や、少子化を見越し、危機意識を持って改革に取り組んだ私立女子校の可能性の高さが述べられているが、この辺りの見方についてどう感じるかは、人それぞれであろう。