ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

真の失業率(最新データ)

高学歴化と労働者の学歴構成

前稿では、(日本版)ジョブ型雇用をめぐる動きに関し、それが求められる背景として、これから入職しようとする日本の若年者にジョブ型への志向性がみられることを指摘し、特に医学部志望の高まりや情報系学部の人気、また後者のケースでは起業やスタートア…

濱口桂一郎『ジョブ型雇用社会とは何か 正社員体制の矛盾と転機』

ジョブ型雇用社会とは何か: 正社員体制の矛盾と転機 (岩波新書 新赤版 1894)作者:濱口 桂一郎岩波書店Amazon 2009年に刊行した『新しい労働社会』において、著者は日本とは異なる欧米諸国の雇用システムを「ジョブ型」と名付け、それとの対比から、日本の雇…

新型コロナの影響を受けた2020年の国内経済

先月24日に国民経済計算年次推計(フロー編)が内閣府経済社会総合研究所より公表された。この統計では、家計貯蓄率、純貸出(+)/純借入(-)(いわゆるISバランス)、政府のプライマリーバランスなどが注目される。www.esri.cao.go.jp結果のポイントをみる…

大沢真理『企業中心社会を超えて 現代日本を「ジェンダー」で読む』

企業中心社会を超えて――現代日本を〈ジェンダー〉で読む (岩波現代文庫)作者:大沢 真理岩波書店Amazon初版は1993年で2020年に改めて文庫化されたもの。タイトルに明示されるとおり、本書では、日本経済がオイルショックを効果的に乗り越えることができた理由…

今年の10冊

恒例のエントリーです。以下、順不同で。 岡崎久彦『戦略的思考とは何か』 戦略的思考とは何か 改版 (中公新書)作者:岡崎久彦中央公論新社Amazon1983年刊。現在、ソ連は既になく、中国が著しく台頭しその核心的利益が明確になる中、日本の周囲の情勢は様変わ…

兵藤釗『戦後史を生きる 労働問題研究私史』

戦後史を生きる 労働問題研究私史作者:兵藤 釗同時代社Amazon兵藤釗という「労働問題」研究者の人生史。主著は『日本における労資関係の展開』と『労働の戦後史』。かつて、「社会政策から労働問題へ」との提言に始まった日本の労働問題研究であるが、日本経…

牧野邦昭『経済学者たちの日米開戦 秋丸機関「幻の報告書」の謎を解く』

経済学者たちの日米開戦―秋丸機関「幻の報告書」の謎を解く―(新潮選書)作者:牧野邦昭新潮社Amazon 2018年刊。秋丸機関とは、陸軍省に設置された戦争経済を研究する機関であり、経済学者の有沢広巳らが参加した。ケインズが『一般理論』を刊行した1936年以…

真の失業率──2021年6月までのデータによる更新

完全失業率によって雇用情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発生することで完全失業率が低下し、雇用情勢の悪化を過小評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる方法で推計した「…

西野智彦『ドキュメント日銀漂流 試練と苦悩の四半世紀』

ドキュメント 日銀漂流――試練と苦悩の四半世紀作者:西野 智彦岩波書店Amazon 1996年に始まる日銀法改正の議論からアベノミクスのもとでの異次元緩和まで、四半世紀にわたり、ジャーナリスト的な(極力私見を交えず丹念な取材に基づく)視点から日銀の動向を…

東京大学卒業生の進路からみる公務人気の変化(2021年度更新)

国家公務員の労働環境については、「生きながら人生の墓場に入った」*1という言葉が代表するように、その過酷さが話題となり、NHKが特集を組む*2など、一部で話題が尽きない状況となっている。 このような話が広まると、採用の現場にも一定の影響が生じるこ…

ティディエ・エリボン(塚原史訳)『ランスへの帰郷』

ランスへの帰郷作者:ディディエ・エリボンみすず書房Amazon フランスの労働者階級に出自を持ち同性愛者である著者が、父の死を機に十数年ぶりに帰郷したことを起点として、自伝の形式をとりつつ、フランスにおける(所得面のみならず文化資本を含めた)格差…

真の失業率──2021年5月までのデータによる更新

完全失業率によって雇用情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発生することで完全失業率が低下し、雇用情勢の悪化を過小評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる方法で推計した「…

濱口桂一郎、海老原嗣生『働き方改革の世界史』

働き方改革の世界史 (ちくま新書)作者:濱口桂一郎,海老原嗣生筑摩書房Amazon 英米独仏日の労使関係論に関する古典的名著を紹介。一見、適当に選択したようにみえるそれぞれの主張が、「労働法政策を基本的なディシプリン」とする著者の一貫したパースペクテ…

安井翔太『効果検証入門 正しい比較のための因果推論/計量経済学の基礎』

効果検証入門〜正しい比較のための因果推論/計量経済学の基礎作者:安井 翔太技術評論社Amazon 観測データから因果関係を特定することが困難であることは、よく知られた事実である。与えられたデータを用いて因果推論を行う場合、必ずしもオーソドックスな分…

真の失業率──2021年4月までのデータによる更新

完全失業率によって雇用情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発生することで完全失業率が低下し、雇用情勢の悪化を過小評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる方法で推計した「…

真の失業率──2021年3月までのデータによる更新

完全失業率によって雇用情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発生することで完全失業率が低下し、雇用情勢の悪化を過小評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる方法で推計した「…

真の失業率──2021年1月までのデータによる更新

完全失業率によって雇用情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発生することで完全失業率が低下し、雇用情勢の悪化を過小評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる方法で推計した「…

真の失業率──2020年12月までのデータによる更新

完全失業率によって雇用情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発生することで完全失業率が低下し、雇用情勢の悪化を過小評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる方法で推計した「…

酒井正『日本のセーフティネット格差 労働市場の変容と社会保険』

日本のセーフティーネット格差:労働市場の変容と社会保険作者:酒井 正発売日: 2020/02/06メディア: 単行本 主として「就業」及び「格差」の観点から、日本の(広義の)セーフティネットについて、筆者自身の研究も交えつつ、近年の政策研究をサーベイする。…

浜田宏、石田淳、清水裕士『社会科学のためのベイズ統計モデリング』

社会科学のための ベイズ統計モデリング (統計ライブラリー )作者:浜田 宏,石田 淳,清水 裕士発売日: 2019/12/01メディア: 単行本(ソフトカバー) 「社会科学のための」と謳われているように具体的な政策分析事例を取り上げ、加えて「文系人間」でも数式展…

柄谷行人、浅田彰『全対話』

柄谷行人浅田彰全対話 (講談社文芸文庫)作者:柄谷行人,浅田彰発売日: 2019/10/11メディア: Kindle版 1980年代から90年代にかけての対話を集約しており、以前、何処かで読んだことのある文章がほとんど*1。バブル崩壊・金融危機以前の時代性が色濃く感じられ…

真の失業率──2020年11月までのデータによる更新

完全失業率によって雇用情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発生することで完全失業率が低下し、雇用情勢の悪化を過小評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる方法で推計した「…

デイヴィッド・ハンド(松井信彦訳)『「偶然」の統計学』

「偶然」の統計学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫〈数理を愉しむ〉シリーズ)作者:デイヴィッド・J・ハンド発売日: 2017/10/05メディア: 文庫 人は「偶然」を恰も「必然」であるかのように感じ、物語を紡ぎ出すことがある。またその「偶然」は、さほど珍し…

東浩紀『ゲンロン戦記 「知の観客」を作る』

ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる (中公新書ラクレ)作者:東浩紀発売日: 2020/12/11メディア: Kindle版 2010年に創業された株式会社ゲンロンのこの10年間の歴史を、創業者で2018年末まで代表を務めた哲学者、批評家、東浩紀の視点でから振り返るもの。筆者…

今年の10冊

恒例のエントリーです。以下、順不同で。 ジェイン・ジェイコブス(香西泰訳)『市場の倫理 統治の倫理』 市場の倫理 統治の倫理 (ちくま学芸文庫)作者:ジェイン ジェイコブズ発売日: 2016/02/09メディア: 文庫traindusoir.hatenablog.jp

真の失業率──2020年10月までのデータによる更新

完全失業率によって雇用情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発生することで完全失業率が低下し、雇用情勢の悪化を過小評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる方法で推計した「…

シン=トゥン・ヤウ、スティーブ・ネイディス(久村典子訳)『宇宙の隠れた形を解き明かした数学者 カラビ予想からポワンカレ予想まで』

宇宙の隠れた形を解き明かした数学者 カラビ予想からポアンカレ予想まで作者:シン=トゥン・ヤウ,スティーブ・ネイディス発売日: 2020/10/07メディア: 単行本 微分幾何学者で数理物理の世界に大きな名を残す数学者シン=トゥン・ヤウの自伝。原題は”The Shape…

真の失業率──2020年9月までのデータによる更新

完全失業率によって雇用情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発生することで完全失業率が低下し、雇用情勢の悪化を過小評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる方法で推計した「…

トーマス・カリアー(小坂恵理訳)『ノーベル賞で読む現代経済学』

ノーベル賞で読む現代経済学 (ちくま学芸文庫)作者:トーマス・カリアー発売日: 2020/07/10メディア: 文庫 1969年に最初のノーベル経済学賞(アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞)を受賞したフリッシュ、ティンバーゲンから、2009年に受…