備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

2008年8月データによる更新

 今月は、インフレ率が横ばいの中、完全失業率は悪化。食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合は前年同月と同水準(前月0.2%増)。今後は、インフレ率は緩やかに低下し、完全失業率はしばらく悪化が続くと考えられる。
 フィリップス・カーブは、以前指摘した「最悪シナリオ」に近い軌道を描く可能性が高い。この軌道は、1997年の消費税率の引き上げ後のそれに類似しており、今回は、原油等の価格高騰が消費税率の引き上げに類似した効果を経済全体に与えたと考えられる。こうした状況においては、金融の緩和が必要である。もし、引き締め気味の金融政策に移行すると、日本経済は、1997年末以後のような経済の停滞と雇用情勢の悪化を再び繰り返すことになりかねない。
 近年では、原油等の価格の高騰に日本経済が対応することを意味する「新価格体系への移行」なる言葉が聞かれるようである。しかし、その意味するところは極めて曖昧。原油等の価格高騰は、あくまで相対価格の変化であり、これに対応する上で重要なのは、国内需要を喚起するためのマクロ経済政策(つまり、金融緩和)である。また、今後、世界経済が停滞することになれば、原油等の価格は需要の変化に応じて徐々に低下し、相対価格の過度の変化は落ち着きを取り戻すことになる。
 いずれにせよ、国内需要を喚起することができなければ、賃上げの実現も考えにくく、一般物価は大きくは変化しない。「新価格体系への移行」といった曖昧な言葉を使わずとも、金融緩和によって、日本経済はバランスのとれた経済成長を実現することが可能になるだろう。