備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

2008年8月データによるNAIRUの再推計−結果は3.54〜3.57%

(過去のエントリー)

 NAIRUの考え方や計算方法については、前回エントリーをご覧ください。今回は、2008年8月までのデータを加えた上で、以下のような改良を加えました。

  • 消費者物価指数(コア)の消費税制変更の影響をダミー変数により除去し、その上で、前年同月比を計算しインフレ率とした。
  • 期待修正フィリップス・カーブの推計において、前回は、期待インフレ率を前期のインフレ率π(t-1)としていたが、これをΣai・π(t-i), (i=1...20) に改め、最大ラグの次数を20として、実際の次数は情報量基準により決定した。

 改良の結果、フィリップス・カーブの形状は下図のようになります。消費税制変更の影響が除去された結果、曲線はなだらかになりますが、近年の輸入物価の上昇によって、足許のデータが上方にシフトしています。

 足許のインフレ率の上昇は、価格ショック(輸入物価指数/国内卸売物価指数の前年同月比)の上昇によって吸収されることになります。

 推計に用いる期待修正フィリップス・カーブは、下のようなモデルで表現されます(記号の意味は、前回エントリーに同じ)。*1

π(t)=Σai・π(t-i)-a・(U(t)-UN)/U(t)+b・SH(t), (i=1...11) … (PC)

 これをOLSで推計した結果は以下の通りです。

 この結果、固定NAIRUは3.57%*2、可変NAIRU(1980年以降の期中平均値)は3.54%*3と、いずれもほぼ3%台半ばとなります。ただし、可変NAIRUの推移をみると、前回の結果とかなり様相が異なります。

 12月までのデータが揃い次第、再度推計を行う予定です。

*1:Σai≒1, ai≧0 となれば、インフレ率のラグは、適応的期待により形成されたインフレ期待と解釈することができます。ただし、推計結果には係数がマイナスのラグも含まれており、この点を論理的に解釈することは困難です。

*2:期待インフレ率を前回同様に前期のインフレ率とした場合、固定NAIRUは3.78%となります。

*3:前回と同様、ホドリック=プレスコット・フィルターを用いました。