備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

(号外)日本も再び物価低下局面へと再突入

※追記を追加し、数値を改訂しました。(09/08/18)

 先日は米国のSNA統計を紹介しましたが、今回は日本についてみてみます。日本の場合、国内需要デフレーターは2006年頃からゼロ近傍で推移しましたが、2009年に入り、再びマイナス(よって、下図中の民間最終消費、民間総固定資本形成、公的需要の寄与度の合計はマイナス)となりました。ただし、輸入デフレーターがきわめて大きく減少しているため、GDPデフレーターはプラスです。


(注)GDPデフレーターに対する寄与度は、簡便的に、名目・実質GDPに対する各項目別の寄与度から算出した寄与度(対前期比)の後方4四半期分の合計とした。

 なお、実質GDPはプラスとなりましたが、民間総固定資本形成の寄与は引き続き大きなマイナスとなっています。デフレーターの効果もあって純輸出のプラス寄与が大きく、民間最終消費や公的需要の寄与もプラスとなっています。
 日本の就業者数は、実質GDP(数量ベースの付加価値額)の水準に数か月のラグをともないつつも、ほぼ軌を一にして大きく低下しました。リーマン・ショック以前の10年分のトレンドをもとに推計すると、今後、さらに40〜5020〜30万人程度*1の離職者が出る可能性があります。*2雇用維持対策の効果や、就業意欲喪失効果が高まる可能性があるので、必ずしもそれがすべて失業者の増加につながるわけではありませんが、雇用情勢が厳しいことに変わりはありません。

(追記)

 すでに何度か指摘していますが、輸入デフレーターの低下は交易条件の改善を意味するため、マクロの所得環境にとってはプラスの効果を持ちます。これまで、景気回復過程にあったにもかかわらず賃金の伸びが小さかったのは、原油高等による交易条件の悪化が続いたためです。

 これを逆に考えると、少なくとも今後一年間は、交易条件の改善によって企業の賃上げ余力は高まることが期待できます。
 2002年以降、経済の貨幣的側面が弱い動きを続ける中、数量的側面からみれば、完全失業率が大きく低下するなど景気は回復しました。それを支えたのが、非正規雇用による低所得の労働力であったと考えることができます。一方、今後は、数量的な労働力は必要とされない中で、交易条件の改善によるマクロの所得環境の回復に支えられ、高所得(=高スキル)の労働力は維持されることが考えられます。格差社会が懸念されるのは、これまでの景気拡張局面ではなく、むしろ、この先の景気停滞局面であるように思われます。

*1:今回のGDPの結果により改訂しました。

*2:6月末時点を基準。