経済・社会
マクロ経済動学作者:楡井誠有斐閣Amazon 2023年11月刊。動学マクロモデルにカオス理論を応用することで、生産性ショックに依らず、マクロ経済の内生的変動が生じることを理論化。定常過程における通常の経済活動の中でも、ジュグラーサイクル/設備投資循環…
経済成長理論入門: 新古典派から内生的成長理論へ作者:チャールズ I.ジョーンズ日経BPマーケティング(日本経済新聞出版Amazon ソロー・モデルから内生的成長理論に至るマクロ経済モデルを、比較的簡易な数式で俯瞰。原著は1998年刊で、原題は”Introduction o…
国家公務員総合職試験の申込者数は、少子化も相まって減少傾向にあり、社会的にも、近年は公務員の賃金の低さや拘束時間の長さが問題視されるようになっている。これらの問題は、国家公務員の早期退職者の増加に影響していることは、ほぼ確実とみられる一方…
ケインズ 説得論集作者:ジョン・メイナード・ケインズ日本経済新聞出版Amazon ケインズの『孫の世代の経済的可能性』では、「技術的失業」という概念が取り上げられる。これは、省力化のペース速過ぎ、労働力の新たな用途を見つけ出すことができないことで発…
J・S・ミル 自由を探究した思想家 (中公新書)作者:関口正司中央公論新社Amazon 2023年6月刊。J・S・ミルといえば、父ジェームズやジェレミー・ベンサムの薫陶を受けた早熟の天才との印象を持つ。本書では、評伝という形式で、ミルの思想の全体像をみる。…
新・日本のお金持ち研究作者:橘木 俊詔,森 剛志日経BPマーケティング(日本経済新聞出版Amazon 2009年10月刊。2005年に出版された『日本のお金持ち研究』の続編で、内容は異なる。本稿の著者は、前著『日本のお金持ち研究』を未読であるが、関係箇所は概ね引…
セーフティネットと集団 新たなつながりを求めて日経BP 日本経済新聞出版Amazon 2023年5月刊。日本のセーフティネットは、2008年の世界金融危機、また同年末の「年越し派遣村」を契機に非正規雇用者の労働条件が社会問題化したこと等を受け、無料の職業訓練…
資本主義の本質について イノベーションと余剰経済 (講談社学術文庫)作者:コルナイ ヤーノシュ講談社Amazon 訳書の初出は2016年で、原著は2014年刊。原題は”Dynamism Rivalry, and Surplus Economy: Two Essays on the Nature of Capitalism”。社会主義シス…
本年6月に公表された厚生労働省『人口動態調査(概数)』によれば、2022年の出生数は約77万人(前年約81万人)、合計特殊出生率は1.26(同1.30)となり、少子化が加速している。このうち出生数は、母数となる女性人口が減少しており、それに伴う減少要因と…
21世紀の財政政策 低金利・高債務下の正しい経済戦略 (日本経済新聞出版)作者:オリヴィエ・ブランシャール日経BPAmazon 原著は2022年刊で、原題は”Fiscal Policy under Low Interest Rates”。自分の世代的には、著者は、マクロ経済学の教科書としてある種「…
世界インフレの謎 (講談社現代新書)作者:渡辺努講談社Amazon 2022年10月刊。パンデミックとウクライナ戦争のさなか、欧米諸国で生じた世界インフレの原因を探る。2022年2月に始まるウクライナ戦争を契機として、原油、穀物等の供給制約が生じ、コスト・プッ…
給料はあなたの価値なのか――賃金と経済にまつわる神話を解く作者:ジェイク・ローゼンフェルドみすず書房Amazon 原題は”You’re Paid What You’re Worth: And Other Myths of the Modern Economy”で、2021年に出版(邦訳は2022年2月刊)。 著者は、大学学部で…
ホモ・エコノミクス ――「利己的人間」の思想史 (ちくま新書)作者:重田 園江筑摩書房Amazon 2022年3月刊。ホモ・エコノミクスとは「合理的経済人」、すなわち自らの経済的・金銭的利得を第一に考えて行動し、あらゆる情報を考慮し、計算を間違えず、自らの選…
実力も運のうち 能力主義は正義か?作者:マイケル サンデル早川書房Amazon 2021年刊。原題は”The Tyranny of Merit What’s Become of the Common Good?”。本書に語られるのは、米国のメリトクラシー、学歴偏重主義の問題である。これは日本にもある程度当て…
本年9月に放送されたNHKスペシャル『“中流危機”を越えて』は、生活水準や社会階層に関する意識調査*1の結果を参照しつつ、日本の「所得中間層」の実態を取材するものだった。www.nhk.jp かつて一億総中流と呼ばれた日本で、豊かさを体現した所得中間層がい…
賃金と物価の水準を相関図で確認すると、2013年以降、総じてみれば賃金と物価が歩調を合わせ上昇してきたことがわかる。それまでは賃金と物価がともに減少するデフレが継続していたが、2013年を境にそれが反転し、デフレではない状況となっている。 諸外国と…
AI監獄ウイグル作者:ジェフリー・ケイン新潮社Amazon 原題は”The Perfect Police State”で2021年刊。邦訳は2022年1月刊。新疆ウイグル自治区といえば、幼少期にNHK特集『シルクロード』を見、さまよえる湖ロプノールなどに思いを馳せ、高校時代の社会科教…
gogatsusai.jp 東京大学五月祭の講演をYouTubeで聴いたので、自分なりに理解したところを記録した。 なお、講演で用いられた資料は公開されていないが、財務総合政策研究所ホームページに公開されている資料*1とほぼ同じである。 *1:https://www.mof.go.jp/p…
計量経済学---ミクロデータ分析へのいざない作者:末石 直也日本評論社Amazon 2015年の刊行。取り上げるテーマは線型回帰に始まり、操作変数法、プログラム評価、GMM*1、制限従属変数、分位点回帰、ブートストラップ、ノンパラメトリック法と、わずか200頁…
資本主義の方程式-経済停滞と格差拡大の謎を解く (中公新書, 2679)作者:小野 善康中央公論新社Amazon 日本経済は成長経済から成熟経済へと移行し、これまで、成長経済を基礎として作り上げられたマクロ経済学上の数々の処方箋は、大きな見直しを迫られている…
物価とは何か (講談社選書メチエ)作者:渡辺努講談社Amazon 物価は、直感的には「モノの値段」という風に捉えられがちだが、その本質は貨幣と商品(財・サービス)全般との交換比率、すなわち貨幣の価値を示すマクロ経済的な概念である(経済主体それぞれの購…
進化する経済学の実証分析 経済セミナー増刊日本評論社Amazon その名称が示す通り、本書では、経済学の様々な分野における実証分析について、その最前線を、その分野の第一人者が渉猟。2016年に『経済セミナー』の増刊号として出版され、2020年に増補版とし…
traindusoir.hatenablog.jp 前稿では、統計の結果をもとに、以下の二つの結論を導いた。 中高年層の高学歴化は今後さらに進む。このことは企業に対し単位労働コストの上昇という形で影響。現在の賃金水準を維持する上で、コスト上昇分に見合う労働生産性の増…
前稿では、(日本版)ジョブ型雇用をめぐる動きに関し、それが求められる背景として、これから入職しようとする日本の若年者にジョブ型への志向性がみられることを指摘し、特に医学部志望の高まりや情報系学部の人気、また後者のケースでは起業やスタートア…
ジョブ型雇用社会とは何か: 正社員体制の矛盾と転機 (岩波新書 新赤版 1894)作者:濱口 桂一郎岩波書店Amazon 2009年に刊行した『新しい労働社会』において、著者は日本とは異なる欧米諸国の雇用システムを「ジョブ型」と名付け、それとの対比から、日本の雇…
先月24日に国民経済計算年次推計(フロー編)が内閣府経済社会総合研究所より公表された。この統計では、家計貯蓄率、純貸出(+)/純借入(-)(いわゆるISバランス)、政府のプライマリーバランスなどが注目される。www.esri.cao.go.jp結果のポイントをみる…
企業中心社会を超えて――現代日本を〈ジェンダー〉で読む (岩波現代文庫)作者:大沢 真理岩波書店Amazon初版は1993年で2020年に改めて文庫化されたもの。タイトルに明示されるとおり、本書では、日本経済がオイルショックを効果的に乗り越えることができた理由…
戦後史を生きる 労働問題研究私史作者:兵藤 釗同時代社Amazon兵藤釗という「労働問題」研究者の人生史。主著は『日本における労資関係の展開』と『労働の戦後史』。かつて、「社会政策から労働問題へ」との提言に始まった日本の労働問題研究であるが、日本経…
経済学者たちの日米開戦―秋丸機関「幻の報告書」の謎を解く―(新潮選書)作者:牧野邦昭新潮社Amazon 2018年刊。秋丸機関とは、陸軍省に設置された戦争経済を研究する機関であり、経済学者の有沢広巳らが参加した。ケインズが『一般理論』を刊行した1936年以…
完全失業率によって雇用情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発生することで完全失業率が低下し、雇用情勢の悪化を過小評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる方法で推計した「…