備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

佐和隆光、村田泰隆、浅田彰「京都鼎談」(週刊ダイヤモンド 01/21/06)

  • 日本や欧米の有力企業のSCMは、ITバブルの前後とは比べものにならないほどに革新されている。かつての「ニューエコノミー」の議論では、経済の構造が変わり、在庫循環・設備循環という古典的な景気循環から米国経済は開放されたといわれたが、確かにそのようになりつつある。
  • 日本がポスト工業化社会に向かうためには、①製造業がITを取り入れて、生産プロセスと経営プロセスを抜本的に改変して蘇ること、②金融、情報通信、教育等の「ソフトウェア」産業が経済の中枢部に躍り出ることが必要であり、当面は、軸足をハイテク製造業においてポスト工業化を進めるべき。
  • 出来上がった製品の差別化だけではなく、生産・経営プロセスの差別化が重要であり、このようなインタンジブル・アセットの大きい企業こそが強い企業と言える。
  • 利益志向=モラル衰退、という図式のみが注目されるが、行き過ぎた利益志向が知的好奇心を衰退させることこそが大きな問題。この問題を解決するためにも、官でも民でもない公(パブリック)の形をもう一度考えなければならない。

コメント 「ポスト工業化」の中身が今ひとつよく見えない。西村清彦本(07/11/05付けエントリー参照)に近いような気もするし、そうでないような気もする。民間企業が設備投資リスクから解放されるという見方についても一抹の違和感。仮に「ポスト工業化社会」という実体があるとして、それが企業の雇用管理面にどのような影響をもたらし、勤労者生活にどのような変化を及ぼすのか、製品サイクルの早さなど、消費者志向の変化をどう考えるか、といったあたりも考えどころか。