ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

太田智之「団塊世代の退職とその影響」(みずほリサーチ 05/01/06)

  • 昨年来の雇用環境改善の背景には、景気回復による人手不足感の強まりに加えて、2007年から本格化する「団塊世代の大量退職」(2007年問題)への対応という企業側の事情。高齢者に対する定年延長や継続雇用制度は、労働力不足への懸念が強まる中、労働供給を確保する有力な手段として注目されている。
  • 2002年以降の景気回復局面では、失業率が低下する一方、ミスマッチの縮小を示すUV曲線(ベバレッジ曲線)の左下方シフトはみられなかった。現在の均衡失業率は3.9%と高く、足下の人手不足感を強める原因となっている。
  • 団塊世代の比率が高い職種と企業が求める人材の職種との間には、ミスマッチが存在し、高齢者に対する定年延長や継続雇用制度が人手不足の解決策となりうるかは不透明。政府には、これまでのミスマッチ解消策の効果を検証した上で、より実効性の高い施策を希望。

コメント 人手不足と高齢者の継続雇用等との関係についての記述は妥当と考えるが、UV分析及び均衡失業率の解釈については違和感。この結果を①ミスマッチの高まりとみるか、②あくまで経路依存的な動きとみるか、の違いであるが、②の解釈が妥当なのではないか。過度なミスマッチ対策の強調は、極端な見方をすれば、人間の価値観や身体への公権力の介入と見えなくもない。ただし、労働市場の需給調整機能や人材育成といった(通常の)対応は重要だと思う。