- 作者: 佐藤俊樹
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2000/06/01
- メディア: 新書
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(集団主義は、)それがよいかわるいかは別にして、事実として消滅しつつある。そのなかで、個人個人のキャリア、一人一人の社会的地位のどこまでがその人の責任なのかを、はっきりと示さなければならなくなっている。階層の二重底、平等社会のなかの疑惑。
「機会の平等」というのは、統計などの形で、結果としてみえてこなければ、本当にそうなのかはわからない。「自己責任」のどこまでが本当に自分の責任なのか、最後の段階に達するまでわからない。こうした疑惑が、「機会の平等」として語られることの全てが「結果の平等」なのだという氏の発言からも伺える。
なお、自分には、氏の語る平等は全て「結果の平等」のように思うし、氏の語る解決策をフィージブルのあるものと「単純に」肯定する気にもならない。また、「終章」において「自己語り」をはじめる姿勢も感心しない。経済成長のみによってW雇上の「階級」化は解消されないという見方を否定するつもりはないが、市場の効率性を高める一方で所得再分配を重視する立場をとるのであれば、必ずしも経済原理を否定する必要もないだろう。そもそも「誰」に向けて、本書は書かれているのか−ある程度、その含意は読み取れるが、そのあり方は、必ずしも成功してはいないように思えるのである。