ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

所得と自殺率の相関性(補足)

 前回のエントリーでは、都道府県別のクロスセクション・データによって、所得水準と自殺率の間に相関性があることを確認した。ただし、この分析では、高齢化率が所得水準と自殺率の双方に関係をもっているため、見かけ上、所得水準と自殺率の間に相関性が生じている可能性を排除することができない。すなわち、高齢化が進んでいる都道府県ほど就業率が低下しており、消費の停滞と物価・所得の下落が大きくなるとともに、健康不安がより高まることで自殺率も上昇する、といった説明の仕方も可能である。今回は、都道府県別に異なる高齢化の水準を調整した自殺率を推計し、これと所得水準との相関関係を確認することで、上述のような指摘の可能性に一定の回答を与えることを試みる。

 まず、都道府県別自殺率を20〜29歳、30〜39歳、40〜49歳、50〜59歳、60〜69歳の各年齢層別に計算する。使用したデータは、内閣府『平成21年地域における自殺の基礎資料』による住居地別の自殺者数および総務省統計局「人口推計」である。つぎに、これら年齢層別自殺率を全国における年齢層別総人口をウェイトとして加重平均し、都道府県別のクロスセクション型「年齢調整自殺率」を推計した。
 自殺率は、年齢階級ごとにその水準は異なり、50〜59歳において最も高くなる。

これは、年齢が上がれば健康不安が高まることから自殺率が上昇するという〈年齢効果〉のほかに、特定のコーホートにおける自殺率が常に高くなるという〈世代効果〉によって、それぞれの層の自殺率の水準が異なっているためである。都道府県ごとに年齢階級ごとの人口構成が異なれば、当然、自殺率の標準的な水準にも違いがあることになる。今回計算したクロスセクション型「年齢調整自殺率」では、都道府県ごとに影響が異なる〈年齢効果〉、〈世代効果〉の違いを可能な範囲で除去している。

 結果をみると、年齢調整自殺率にもまた所得水準との間に相関性がある。

すなわち、自殺率と所得水準の間にある相関性は、高齢化率が媒介しているための見かけ上のものではなく、実際に、所得水準が低いことは自殺率が高いことに関係していることになる。ただし、前回とりあげた秋田、岩手のほかに青森でもトレンド線を超えて自殺率は高くなり、これらの3県では、所得の低さが自殺率の高さを促す傾向のほか、他の要因によって自殺率が高くなっている可能性がある。この北東北3県における自殺率の高さの理由を解明することは、今後の課題として残される。

 最後に、この回帰分析の結果を掲載する。