※物価と給与の推移について追記しました。(11/05/14)
完全失業率によって雇用情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発生することで、完全失業率が低下し、雇用情勢の悪化を過小評価することがある。この効果 (就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる方法で推計した「真の失業率」を最新のデータを加えて更新した。
9月の完全失業率(季節調整値)は3.6%と前月よりも0.1ポイント上昇した。一方、真の失業率は3.8%と0.1ポイント低下した。真の失業率の低下は順調であり、完全失業率との乖離幅は0.2ポイントとなった。
完全失業者数は季調前月差で増加したが、非労働力人口は減少している。これまで、本ブログでは雇用情勢が転換期にさしかかった可能性を指摘してきたが、いまだ、雇用情勢には改善のモメンタムが感じられる結果となっている。
一方、『家計調査』でみた実収入や消費は減少が続いており、引き続き厳しいが、『家計調査』の結果には「一人負け」の様相も感じられる。名目賃金、特にフルタイム労働者の所定内給与は、今春闘の結果を受けゆるやかながら増加基調であり、フルタイム労働者の数も増加している。むしろ、(マンパワー当たり)給与の(物価上昇率を超えない範囲での)緩やかな上昇が、労働需要側のインセンティヴを通じ、雇用改善のモメンタムを維持させているとの見方もできる。
そして、完全失業率が公表されたこの日に、追加金融緩和のニュースが飛び込んできた。
・「量的・質的緩和の拡大」(日本銀行)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141031a.pdf
雇用の先行きについては、政策効果の見極めも含め、当面は判断が難しく、留保せざるを得ない。円安などを通じ、さらに物価上昇率が高まれば、家計の負担はさらに大きくなる。それに応える賃上げは、当分は、遅れ気味となるだろう*1。消費税率引上げの延期など、家計のマインドを改善するような新たなサプライズを期待する。
(追記)
9月分までのコア物価と所定内給与(規模30人以上)の相関をとると、つぎのようになる(9月の給与は、速報値のもつ上方バイアスを前月の寄与度をもとに試算し除去)。コア物価と所定内給与は、概ね、リーマン・ショック後の経済危機の渦中にあった2008年12月前後とほぼ同じ程度の水準まで上昇したことになる。
https://dl.dropboxusercontent.com/u/19538273/nbu_ts.csv
※季節調整の結果ファイル:
https://dl.dropboxusercontent.com/u/19538273/x-12-arima_output.txt