備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

大湾秀雄『日本の人事を科学する 因果推論に基づくデータ活用』

日本の人事を科学する 因果推論に基づくデータ活用

日本の人事を科学する 因果推論に基づくデータ活用

近年、エビデンスに基づく意思決定が重要視されるが、その一方、企業の保有する人事データは、これまで必ずしも十分に活用されてこなかった。本書の著者は、市場環境や人口動態の急激な変化を迎える中、効率的かつ事業継続性のある企業組織を作り上げていくため、人事データを活用することの有効性を訴える。

基礎的なデータ分析手法とともに、人事労務、賃金制度に関するオーソドックスな理論的見解もわかりやすく丁寧に解説される。さらにフリーの統計分析ソフトフェアについても触れられる*1など極めて実務的であり、人事データにアクセス可能な職員であれば、本書の解説をもとに直ぐにでも分析ができるだろう。加えてコア人材、中間管理職の重要性、AIによるネットワーク情報の活用など現在進行形の研究課題についても触れられており、エビデンス・ベースの分析手法は、企業の問題解決のみならず、人事労務、賃金制度等の分野での今後の研究動向を考える上で必須のものとなることが示唆される。

営業社員によるゲーム理論的な利得最大化行動が人事データによって露わになり制度変更につながる件、従業員満足度調査を通じてみえてくる人事評価制度のバイアスなど、個別の結果をみているだけでも面白い。