今年も、恒例のこのエントリーを書くことにします。今年は、やむを得ない事情があり、読みたい本を読むことよりも、既存の蔵書の中から選んで読むことの多い1年間でした。
では早速ですが、以下、順不同で。
オリバー・ウィリアムソン(浅沼萬里、岩崎晃訳)『市場と企業組織』
この本とは、7月末から2カ月程度付き合い、その間の「仕事」に活用しました。そこで得た知識は、今は社内向けの記事にまとめており、自分自身の便益にはつながらなかったものの、もし、周囲の人たちが物事を俯瞰する際の知恵として役立つのであれば、相応の価値ある「仕事」であったかな、と思うようになっています。
http://d.hatena.ne.jp/kuma_asset/20120721/1342840690
http://d.hatena.ne.jp/kuma_asset/20120804/1344046245
http://d.hatena.ne.jp/kuma_asset/20120820/1345466256
http://d.hatena.ne.jp/kuma_asset/20120822/1345642645
藤本隆宏『能力構築競争 日本の自動車産業はなぜ強いのか』
前書に関連して読んだ本です。製品アーキテクチャー論の基本的文献として既に「古典」の域に達しており、今更の感は否めませんが、企業は事業戦略の見直しに迫られ、一方で、地域経済を立て直す戦略が見通せない今だからこそ、読み返す意義は大きいとも思います。この本では、日本の自動車産業の「強さ」を製品アーキテクチャーの複雑性と開発・生産現場の組織能力にみていますが、一方、つぎの本は、そうした部分で生じつつある変化や国家戦略の影響を読み取ろうとしています。
なお、こうした課題は、中長期的な視点を必要とするものであり、景気循環に左右される「短期」の視点とは切り離して考えるべきものです。
小林英夫、金英善『現代がトヨタを超えるとき─韓国に駆逐される日本企業』
タイラー・コーエン(久保恵美子訳)『フレーミング 「自分の経済学」で幸福を切りとる』
デレック・ボック(土屋直樹他訳)『幸福の研究 ハーバード元学長が教える幸福な社会』
小野善康『不況のメカニズム ケインズ『一般理論』から新たな「不況動学」へ』
この本は、次書との関連で読み返しましたが、著者の主張の大要はここに既に言い尽くされています。特に、金融政策に関する著者の見方については、この本に遡ってみることが必要です。国内経済に占める公的部門の拡大を容認する一方、人間の行動様式における合理性に信念を置く、という理念の組み合わせは著者に特徴的であり、他の論者にみることはできません。
http://d.hatena.ne.jp/kuma_asset/20120412/1334229085
小野善康『成熟社会の経済学 長期不況をどう克服するか』
オルハン・パムク(和久井路子訳)『雪』
「既存の蔵書の中から選んで読むことの多い1年間」であったと書きましたが、その蔵書において著者の本は充実しており、まとめて読みました。この本は、ドストエフスキーの『悪霊』を思わせる内容で、抜き去り難い印象を残しました。