※給与の増減率のグラフについて、足許のデータが比較可能になるよう、年率に修正し、追記を加えました。(12/02/2013)
完全失業率によって雇用情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発生することで、完全失業率が低下し、雇用情勢の悪化を過小評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる方法で推計した「真の失業率」を最新のデータを加えて更新した。
完全失業率(季節調整値)は4.0%と前月と同水準であるが、真の失業率は前月に引き続き順調に低下し、4.8%となった。この結果、完全失業率 (公表値)と真の失業率との乖離幅は0.8ポイントまで縮小した。
このように、雇用の「量」の改善は進んでおり、リーマン・ショック前の状況にほぼ到達している。ただし、雇用の「質」の改善はほとんど進んでいない。役員を除く雇用者に占める非正規雇用者の割合は、月別では37%に達し、「雇用者の3分の1が非正規」などといっていた時代がすでに懐かしく感じられるほどである*1。
http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/zuhyou/05417.xls
この割合は、いまのところ、縮小する兆しはまったくみられない。一方で、先日のエントリーにも書いたとおり、近年の給与の低下は、雇用者に占める非正規雇用者の割合の上昇によって大部分が説明できる。物価の上昇に見合う賃金の上昇をマクロで実現することは、少々の賃上げがあっても、この雇用面からの下押し圧力が続く限りは、困難であることが予想される。
ちなみに、役員を除く雇用者に占める非正規雇用者の割合を長期的にみると、つぎのようになる。
また、5年間(足許は2年間)の給与(名目賃金指数)の増減率について寄与度分析したものが、下のグラフである。
※グラフを修正(12/02/2013)
増減率は、各年ともにマイナスとなり、寄与度でみると、パート労働者の構成比の与える影響が極めて大きいことが明らかにみて取れる。給与の減少には、パート労働者の構成比が上昇したことのほか、フルタイム労働者の特別給与(大部分は賞与)の減少が、大きな影響を与えている。
2010年以降は、所定外労働時間の回復により、フルタイム労働者の所定外給与が増加しているほか、パートタイム労働者の給与の増加が目立つ。