完全失業率によって雇用情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発生することで完全失業率が低下し、雇用情勢の悪化を過小評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる方法で推計した「真の失業率」を最新のデータを加えて更新した。
6月の結果をみると、完全失業率(季節調整値)は2.8%と前月より0.1ポイント低下したが、真の失業率は2.3%と前月より0.1ポイント上昇した。グラフの真の失業率は後方移動平均によるもので、足許の動きは緩慢である。このため季節調整値(後述のCSVファイルを参照)でみると、4月3.5%(前月差1.4ポイント上昇)の後、5月は前月と同水準、6月は0.1ポイント低下した*1。
非自発的失業者は前年差で増加(5カ月連続)し、非正規雇用の減少も先月と同様であるが、正規雇用は増加に転じた。一般職業紹介状況(厚生労働省)の新規求職申込件数は季調前年比で増加(2カ月連続)し、その幅も高まった(4.8ポイント増から18.2ポイント増へ)。
このところ話題となっている休業者の動きをみると、4・5月の前年差にみられた拡大幅は6月に入り縮小、逆に週30時間以上就業者の縮小幅は拡大した。なお、月末1週間の就業時間別にみた当該データは、即位の日を含むゴールデンウィークに重なる昨年4月等、祝日の変化による前年差への影響が大きい。
所定内給与と消費者物価の相関に関する4月までの結果は以下のようになる。昨年末以降賃金の、また今年に入ってから物価の減少傾向が明確となり、アベノミクスは既に逆転、デフレの方向へ推移している。
(注)本稿推計の季節調整法を、2020年1月分から変更*2した。
(真の失業率のデータ(CSV)が必要な方はこちらへ)
https://www.dropbox.com/s/5jffx3n8ab5zzbt/nbu_ts.csv?dl=0