完全失業率によって雇用情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発生することで完全失業率が低下し、雇用情勢の悪化を過小評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる方法で推計した「真の失業率」を最新のデータを加えて更新した。今回は、推計の基礎となる潜在的(均衡)労働力率を2019年まで延長推計した上で、2020年1月までの結果を過去に遡って再計算した。
まず年間の結果をみると、2019年の真の失業率は2.4%と前年よりも0.2ポイント低下した(公表値である完全失業率は2.4%と前年と同水準)。前回推計値と比較すると、潜在的労働力率が上方改訂されたことで真の失業率は上方改訂された(2018年で約0.4ポイント程度の上方改訂)。
つぎに1月の結果をみると、完全失業率(季節調整値)は2.4%と前月より0.2ポイント上昇したが、真の失業率は1.9%と前月より0.1ポイント低下した。引き続き、真の失業率は減少基調である。現推計時点において、真の失業率は基準年*1である1992年より改善していることとなる。(12月の真の失業率は、前回は1.0%としていたが、改訂により足許で1.0ポイント程度上振れし2.0%となった。)
所定内給与と消費者物価の相関に関する12月までの結果は以下のようになる。サンプル替えの断層により、一般労働者の特別給与が減少、パートタイム労働者比率が上昇したことで、賃金は2019年1月に大きく減少したが、その後は物価・賃金ともに上昇基調に回復した。ただし、消費者物価がトレンド線よりも高く(いわゆるリーマン・ショック時と同程度)、消費停滞の継続が懸念される。
なお、本稿推計の季節調整法を、今回から変更*2した。
(参考エントリー)
- アベノミクス以降の労働力率(2018-02-02)
- 賃金と物価の関係についての補足(2019-03-06)
(真の失業率のデータ(CSV)が必要な方はこちらへ)
https://www.dropbox.com/s/fixt1abitfo58ee/nbu_ts.csv?dl=0
(注)データとして公開している真の失業率の季節調整値については、再推計の結果を反映した他、AICテストの結果これまでの推計では検出されなかったレベルシフトが検出されたため、前回推計値との変化幅が大きくなっている。