備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

呉敬蓀×青木昌彦「リアルチャイナ 成長モデルの限界見つめよ」(日経ビジネス 07/18号)

  • (呉)中国のこれまでの成長は、資本の大規模な投入に依存したものであるが、私見では、このような成長モデルには一定の限界。(青木)中国がグローバル経済と調和をとりながら、安定した発展を維持するには、エネルギーと環境が大きな制約。
  • (呉)先進資本主義国の現代的な市場経済の制度と比較すると、①土地の手当てや資金の融資など、経済活動に不可欠な資源を配分する機能のかなりの部分を、特に、省や市など地方レベルの政府が握っており、②「法の支配」という観点から現代的な市場経済のあるべき水準に達しておらず、契約の正義誠実の原則が守られず詐欺なども発生。
  • (青木)法治の確立は市場経済の発展にとって極めて根本的。商人と商人の個人的な信頼を超えて取引が発展していくには、その履行を保証するメカニズムを政府が担うことが必要であり、市民が政府をコントロールするという民主的な制度が重要。(呉)「司法の地方主義」のため、裁判官の任命、裁判所の設置、必要な運営経費などは、全て地方政府が指示、手配。こうした状況を打破するためには、財政の裏付けを伴った「権力の集中化」が必要。
  • (呉)経済学的には、格差は大きい程補完性は高く、中日が経済的な補完関係を活かして協力すれば、両国の経済活動全体を間違いなくプラスサムに導ける。(青木)アジア経済の統合に向けて日本と中国が中心的な役割を果たさなければならないのはその通りだが、通貨統合の方向に進むにはまだ課題が山積。
  • (青木)為替の安定化、金融政策の独立性、自由な資本移動は両立しないという「マンデルの三角形」。これまで中国は、自由な資本移動を犠牲にして為替の安定化を図ってきたが、開放政策が進むことで、資本移動の規制は次第に中国自身の手を縛る。元はドルだけでなく、円やユーロなど経済関係の重要性に応じてリンクする「バスケット制」に徐々に移行するのが論理的にふさわしい。
  • (青木)日中関係は「政経分離」で行くべきで、ビジネスマン同士、学術、芸術等それぞれの次元のプロフェッショナル同士が、高い職業倫理知識、スキルに基づいて、もっと深く交流すべき。(呉)上海で生じた半日デモは無知によるもの。参加した若者の中には農村部から出稼ぎに来た労働者も混じっており、彼らは右翼の発言や、日本人全体に占める右翼の割合も知らない。