ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

「平成18年版国民生活白書 多様な可能性に望める社会に向けて」(内閣府)

コメント 国民生活白書は、フリーターの中高年化の問題(平成15年版)や若年層での所得格差の問題(平成17年版)などの分析を他に先駆けて世に出しており、(緻密な分析は他に譲るにしても、)これまでにない切り口から分析を試みるところが注目される。今年は、格差問題に注目が集まる中で、「多様な可能性」を実現させる社会とは何か、ということを論じている。
 若年者については、「適職探しへの挑戦」の増加傾向について分析される。総じて着目点(適職探しをする若年者が増えている背景分析など)はおもしろいのだが、企業側からの視点が見えず、勤続を通じた職業能力の形成と賃金の高まり、企業内での職業キャリアの形成、といった話との繋がりがとれない。内部労働市場の機能についても一定の評価があってよいと思うのだが、その辺りはネグられている感じ。「転職・やり直し」を容易にする仕組み、という視点を掲げるのであれば、業績・成果主義の浸透等近年の企業における雇用管理や賃金制度の変化についてもフォローすべきだが、長期雇用に変化がみられないことをもって「転職・やり直し」の動向には変化がないとの否定的評価を下すのでは、正直足りない気がする。実際、このような近年の雇用関係の個別化に向けた動きは、いわゆる「雇用流動化」とは次元を異にした動きであり、「多様な可能性」=「雇用流動化」という思考回路に留まっていては、現実の動きを見誤るのではないか、と個人的には思う。
 それと若年者の経済的展望と少子化との関係を論じるのであれば、「一定の所得を下回る世帯は、子どもを持たない割合が高い」こと以上に、若年層の結婚の問題がより重要なのではないか。
 と厳しい意見を書いてみたが、内容は総じておもしろかったので、★4つといったところ。

(追記)ESP編集後記の「平成18年版国民生活白書用語解説」は、なかなか秀逸w