ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

ジョン・マクミラン「市場を創る バザールからネット取引まで」

市場を創る―バザールからネット取引まで (叢書“制度を考える”)

市場を創る―バザールからネット取引まで (叢書“制度を考える”)

コメント 原題は"Reinventing the Bazaar, A Natural History of Markets"。標題の通り市場を如何に「創る」かという点に力点が置かれた書であると思う。市場とは「唯一の自然な経済」であり、どの様な環境においても、自生的で立ち直りが早い(ガーナのマコラ市場の事例)。しかし、それは「人間的な不完全性を伴った、人間による発明物」であり、ルール、慣習、制度による支えを必要とする。市場をうまく機能させるには、(1)情報の流通(情報の非対称性)、(2)信頼、(3)競争の促進(独占・寡占)、(4)財産権の保護、(5)外部不経済の抑制、といった課題に応えることが必要である。
 本書のメッセージは、次の2つの皮肉に要約できるという。

 貧困を嫌悪している政治的に極左の人々は、貧困を固定化する政策を支持している。市場を尊重する自由放任主義の熱狂的な支持者たちは、市場の崩壊を引き起こすシステムを提唱している。

 この2つの皮肉は、近年の格差問題への様々な識者の見解を聞いていれば、よく理解できるものである。第16章では貧困の問題が取り上げられるが、貧困は、通常は経済成長によって減少する。経済成長は、貧困問題の全てを解決するわけではないが、同時に成長は貧困問題を解決するための不可欠な一部でもある。政府については、大きい政府支出は低成長と関連するが、政府が経済の非常に小さな部分でしかないときにはそうではない。その意味では、「現代経済」はリバタリアン的原理では機能し得ない。
 最後に、チャーチルによる「民主主義は統治形態の中で最悪のものである」が、ただしそれは「これまでそのときどきに試みられてきた他のすべての統治形態を除いて」という言葉が引用され、市場システムも(それがうまく設計されたときにのみ、うまく機能するという意味で)民主主義のようなものだとされる。