ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

いわゆる非正規雇用はいつから増加し、そして足許ではどうなっているのか?

 02/28付けエントリーにおいて、次のように記述した。

 企業行動に関連して、非正社員が増加している理由を問う調査は各種あるが、そのほとんどは、近年の非正社員の増加は、(高度情報化等に伴うものとするよりも)コスト削減のためであるとする回答がほとんどを占めているように思う。つまり、非正社員の大幅な増加は、長期不況・デフレ下において雇用にかかるコストを削減せざるを得ないという企業の事情によって引き起こされたと解釈するのが妥当であろう。

 実証を重視する当ブログとしては、この点を確認せずにいるのは片手落ちであろう。
 「非正社員」をどのような定義でとるかは、結構難しい技術的問題である。統計的には、(1)労働時間の長短による区分、(2)雇用契約期間の定めによる区分、(3)職場での呼称、という3つの区分がある。ここでは、
 (1) 雇用者に占める週労働時間が35時間以上の者の割合
 (2) 雇用者に占める雇用契約の定めがないか雇用契約期間が1年以上の者(常雇)の割合
 (3) 役員を除く雇用者に占める正規の職員・従業員の割合
として、グラフにしてみたのが下である。

 「正社員」に相当するであろう者の割合は、(1)では1990年以降、(2)では1997年以降、それまでのトレンドとは異なる明らかな下落過程となる。(2)については、調査期間中の休日数の違いによると思われるブレが時々みられる。(3)は、1990年代以降に限れば(2)の動きと概ね連動している。ところが、1980年代前半は、(2)と異なり大きな低下を示す。*1デフレが深刻化したのは1990年代半ば以降であるが、労働時間の柔軟化はその5年前から、雇用契約期間の柔軟化はそれと軌を一にして始まっている。
 2002年以降の景気回復過程では、それまでの下落過程に変化がみられる。(1)と(2)については、足許ではむしろ横ばいで推移している。(3)については、それらとは異なり、景気回復期以降も低下を継続している。労働時間が長く雇用契約期間も比較的長い非正社員の割合が、サービス経済化や企業の雇用管理の柔軟化に応じて拡大している可能性がある。
 長期不況・デフレ経済が、こうした動きの背景にあったことはほぼ間違いないだろう。ただし、いわゆる非正規雇用の増加と表現される事象は、必ずしも単線的な慣行の変化を指すものではなく、より複層的な事象であることに注意が必要である。

*1:この理由は、今のところ不明である。