雇用システム
本年9月に放送されたNHKスペシャル『“中流危機”を越えて』は、生活水準や社会階層に関する意識調査*1の結果を参照しつつ、日本の「所得中間層」の実態を取材するものだった。www.nhk.jp かつて一億総中流と呼ばれた日本で、豊かさを体現した所得中間層がい…
traindusoir.hatenablog.jp 前稿では、統計の結果をもとに、以下の二つの結論を導いた。 中高年層の高学歴化は今後さらに進む。このことは企業に対し単位労働コストの上昇という形で影響。現在の賃金水準を維持する上で、コスト上昇分に見合う労働生産性の増…
前稿では、(日本版)ジョブ型雇用をめぐる動きに関し、それが求められる背景として、これから入職しようとする日本の若年者にジョブ型への志向性がみられることを指摘し、特に医学部志望の高まりや情報系学部の人気、また後者のケースでは起業やスタートア…
ジョブ型雇用社会とは何か: 正社員体制の矛盾と転機 (岩波新書 新赤版 1894)作者:濱口 桂一郎岩波書店Amazon 2009年に刊行した『新しい労働社会』において、著者は日本とは異なる欧米諸国の雇用システムを「ジョブ型」と名付け、それとの対比から、日本の雇…
働く女子の運命 ((文春新書))作者: 濱口桂一郎出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2015/12/18メディア: 新書この商品を含むブログ (9件) を見る若年、中高年、女性という区分けは、日本の労働政策の中では比較的馴染みのあるもので、それぞれに応じた雇用・労…
日本の雇用と中高年 (ちくま新書)作者: 濱口桂一郎出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2014/05/07メディア: 新書この商品を含むブログ (15件) を見る 長期雇用と年功賃金をベースに持つ日本的雇用慣行については、賃金水準と仕事のパフォーマンスが年齢が上が…
このところ景気は回復し、物価は上昇しているが、給与があまり増加せず、実質賃金の低下が問題視されている。景気が回復しても給与が思うように伸びないことの大きな要因は、「量」的な側面からみれば雇用は改善しているものの「質」的な側面が改善せず、非…
前回のエントリーで取り上げた濱口桂一郎『若者と労働』では、就活において「人間力」が重視されること、あるいは仕事の経験がない若者が「自己分析」など心理学的ツールを頼ることについて、日本における「教育と職業の密接な無関係」という文脈から説明を…
若者と労働 「入社」の仕組みから解きほぐす (中公新書ラクレ)作者: 濱口桂一郎出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2013/08/10メディア: 新書この商品を含むブログ (18件) を見る 本書は、前著『日本の雇用と労働法』に描かれた日本の雇用システムに関す…
構造的・摩擦的失業率の推計方法としては、先日のエントリーで取り上げたNAIRUのほかに、UV分析による均衡失業率がよく知られている。この推計では、労働力の供給である雇用者と失業者の合計値(U)と、労働力の需要である雇用者と欠員数の合計値(…
スティグリッツの経済学 「見えざる手」など存在しない作者: 藪下史郎出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2013/02/01メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (6件) を見る 経済学者ジョセフ・スティグリッツの評伝、その経済学上の思考の…
※グラフを差し替えました(08/12/13) 安倍政権の経済政策「アベノミクス」は、その出だしから株価の上昇と為替の円高是正をもたらし、好調な滑り出しをみせた(最近、やや足踏み状態となっているが)。こうした動きは、4月に発表されたこれまでとは次元の…
ESPフォーキャスト調査の2013年5月結果と、先日公表された2013年第1四半期の四半期別GDP速報を用いて、今後の就業者数の動きを占うこととする。まずは、成長率の予測を単純にあてはめた実質GDPの水準の推移をみる。 実質GDPは当面順調…
前回のエントリーでは、非正規職員・従業員数が2002年から2007年までの間にどの程度変化したかを世代別に確認し、その結果、 この間、景気回復期にあり、新規学卒者の就職状況も改善していたが、2007年もほぼ同数の非正規職員・従業員数(約2千…
以前のエントリーで、パート・アルバイトで就業する有業者とパート・アルバイトでの就業を希望する無業者を合計した、いわゆる「フリーター」の属性に相当する者の数を年齢階級別(5歳刻み)に集計し、5年ごとに実施される調査(就業構造基本調査)により…
市場と企業組織作者: オリヴァー・イートン・ウィリアムソン,浅沼万里,岩崎晃出版社/メーカー: 日本評論社発売日: 1980/01/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 65回この商品を含むブログ (14件) を見る 続く二つの章では、支配的企業と独占の問題(独占…
市場と企業組織作者: オリヴァー・イートン・ウィリアムソン,浅沼万里,岩崎晃出版社/メーカー: 日本評論社発売日: 1980/01/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 65回この商品を含むブログ (14件) を見る 第十章においては、内部組織と市場の関係について…
市場と企業組織作者: オリヴァー・イートン・ウィリアムソン,浅沼万里,岩崎晃出版社/メーカー: 日本評論社発売日: 1980/01/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 65回この商品を含むブログ (14件) を見る 前エントリーでは、市場における商品取引のかわり…
※一部追記・修正しました。(07/22/12)市場と企業組織作者: オリヴァー・イートン・ウィリアムソン,浅沼万里,岩崎晃出版社/メーカー: 日本評論社発売日: 1980/01/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 65回この商品を含むブログ (14件) を見る エリノア・…
若年者就業の経済学作者: 太田聰一出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社発売日: 2010/11/19メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 76回この商品を含むブログ (13件) を見る 数々の研究成果を発表している(「現役」の)労働経済学者による若年雇用問題に関す…
5月16日付けのBLOGOS Discussionに投稿した内容を、こちらにも載録する。 若者雇用戦略の骨子案が公表。効果はある?若者の就職を支援する「若者雇用戦略」の骨子を政府がまとめました。 ・参照リンク 若者雇用戦略の骨子(案)日経新聞の報道によると最…
16日に公表されたESPフォーキャスト調査により、今後の就業者数の推移を予測する。まず、実質GDPの水準はつぎのようになる。 実質GDPは、緩やかに上昇しているが、経済危機以前のピークの水準に達するのは、2013年の第3四半期まで待つことになる。ま…
※追記および関連エントリーを追加しました。(12/03/11) ここにいう「ジレンマ」とは、通常、雇用情勢がよくなること、例えば、求人数が増加すれば、雇用政策の執行はより容易になると考えるのが自然であるが、逆に、雇用情勢がよくなることによって、雇用…
日本の雇用と労働法 (日経文庫)作者: 濱口桂一郎出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社発売日: 2011/09/16メディア: 新書購入: 10人 クリック: 124回この商品を含むブログ (9件) を見る 日本の雇用システムを構成している各種の部分システムは、メンバーシ…
2月14日(月)に2010年第4四半期のGDP速報が公表され、2010年における実需の動向を表すデータが出そろった。ついては、ちょうど1年前に行ったのと同様、ESPフォーキャスト調査*1による実質GDP成長率予測をベースに、今後の就業者数の推移がどう…
先日、来春の大学卒業者の就職内定率が12月1日現在で68.8%(前年73.1%)、高校卒業者が70.6%(同68.1%)となり、大学卒業者の就職内定率は昨年を下回り過去最低となったことが大きく報道されました。就職内定率は今後4月に向けて上昇することになりま…
以前に作成したグラフを更新したので、提供します。2010年半ばより、非自発的な離職失業者は減少に転じ、就業者数もここ2カ月は増加となっています。一方で、医療、福祉の就業者数は引き続き増加しております。2007年には建設業とほぼ同数だった就業者数は…
仕事と日本人 (ちくま新書)作者: 武田晴人出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2008/01/01メディア: 新書購入: 5人 クリック: 56回この商品を含むブログ (15件) を見る 今村がいうように、労働の喜びは虚構であるとすれば、仕事や地位を得ることの喜びもまた、…
4月20〜21日にワシントンD.CにおいてG20労働・雇用担当大臣会合が開催されました。このときに、ILO(国際労働機関)が提出したレポート"Accelerating a job-rich recovery in G20 countries: Building on experience" を読む機会がありましたので、少…
※『ガジェット通信』に掲載していただきました。(03/23/10) http://getnews.jp/archives/52631 やや古い話題となりますが、2010年1月の完全失業率は改善し、4.9%となりました。この「改善」には、これまでの動きとは異なる傾向がひとつみられます。就業…