ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

停滞が見込まれる就業者数

 2月14日(月)に2010年第4四半期のGDP速報が公表され、2010年における実需の動向を表すデータが出そろった。ついては、ちょうど1年前に行ったのと同様、ESPフォーキャスト調査*1による実質GDP成長率予測をベースに、今後の就業者数の推移がどうなるかを予測してみることにする。

 まず、今後の実質GDPの推移について、ESPフォーキャスト調査をベースに確認する。実質GDPは、2008年秋の経済危機で著しく低下したが、その後は概ね回復傾向にある。2010年第4四半期はマイナスとなったが、予測によれば、その後は緩やかに回復することが見込まれている。ただし、経済危機前の水準に達するのは、2013年の春になる見込みである。

 続いて就業者数を、前回と同様のGDP就業者関数によって推計すると、2011年も緩やかに減少することが見込まれる。就業者数がトレンドとして増加に転じるのは、2012年の半ば以降であり、それまでは、実需が順調に回復する中にあって雇用は増加しないという時期がしばらく続くことになる。

 このように雇用の停滞が継続するのは、主として、経済危機への対応として雇用維持が図られたため、実需がある程度の水準に達しない限り、企業は雇用を増やそうとはしないためである。完全失業率は経済危機後、既往最高値を記録したが、それでも5.6%(2009年7月)であり、ちまたでいわれたような水準*2には達していない。ただし、前に述べたように、これには企業の雇用維持によって離職者の増加が抑制された効果が強く働いている。このことは、実質GDP成長率と完全失業率の前年差の相関関係(オークン法則)にはっきりと現れる。2008年第4四半期から2009年第3四半期までは、実質GDP成長率が著しく低下する中にあって、完全失業率の上昇はそれほど大きなものではなかった。

 しかし2010年以降は、実質GDP成長率が急回復する中にあって、完全失業率の改善は相対的に小さなものとなっている。これからもしばらくは、雇用情勢は大きくは改善しないであろう。オークン法則に即した定常的軌道に沿って雇用が順調に回復していくためには、実需がさらに一段回復し、需給が引き締まる必要があるが、デフレーターの動きをみる限りでは、当面それを期待することは難しそうである。*3

*1:http://www.epa.or.jp/esp/fcst2.html

*2:経済危機の直後には、実需の低下によって日本の雇用は崩壊し、完全失業率が10%前後に達するであろうことを予測するような向きもあった。また、完全失業率は現実にも急激に上昇し、短期間の間に既往最高値に達している。とはいえ、その背景としては、就業意欲喪失効果がこれまでの景気後退期よりも小さかったことを考慮する必要もある。これは、「真の失業率」が2009〜2010年の間、いびつな動きをしている点からもうかがえる。

*3:デフレーターの推移、米国のデータとの比較については、おって掲載する予定である。なお、最近、周囲でスマート・フォンを持っている人が増えていることなどを鑑みると、肌感覚としては、今後の景気の動向にそれ程悲観的ではなかったりもする。