ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

90年代の格差拡大の主因は何か?

 06/22付けエントリーに関連して。格差問題については、①長期的にみたジニ係数の上昇傾向は、高齢化や単身世帯の増加を主因とするものであるが、②若年層における非正規雇用の増加は、将来的な格差拡大を懸念させる、というのが、この問題をめぐる世間的に概ね確立されたコンセンサスであると思われるが、同時に、不況、特にそれに伴う失業率の増加が、格差の拡大(つまりジニ係数の上昇)に寄与している。このことは、昨今の格差論議における一つの盲点になっているように思われる。*1
 実際、先日掲載した完全失業率のグラフにジニ係数の水準を重ね合わせると、次のようになる。

 失業率とジニ係数の相関をみるために、回帰分析により、gini(t)=b・ue(t)+c+u(t) のb及びcを当該区間で推計すると、①完全失業率については、R=0.839, b=0.002892(t=5.775)、②補正済「真の失業率」については、R=0.784, b=0.001909(t=4.727) となり、明らかな相関関係がある。
 さらに、説明変数に55歳以上人口対15歳以上人口比率(%)を加えて、回帰式をgini(t)=b1・ue(t)+b2・ag(t)+c+u(t) のように書き換えて推計すると、①完全失業率については、R=0.841, b1=0.003259(t=2.892), b2=-0.00014(t=-0.366)、②補正済「真の失業率」については、R=0.785, b1=0.001741(t=1.810), b2=0.00009(t=0.194)となり、90年代以降に限れば、ジニ係数の上昇に対する高齢化の説明力はほとんどなく、失業率の上昇でほぼ説明可能であるようにみえる。*2
 これらの含意から、持続的な景気回復(及び、それを可能にするためのリフレーション政策)は、過度に高まった格差を経路依存的に解消していくためにも重要であることが理解できよう。
 なお、ジニ係数は、家計調査における年間収入十分位階級別平均年間収入額を基に推計したものを用いた。本来のローレンツ曲線は滑らかに上昇するが、この推計によるローレンツ曲線は段階的に上昇する。ジニ係数の水準を、より本来の水準に近づけるには、「分位」の区分を小さくするため、(一般には公開されていない)マイクロデータを用いることが考えられる。

*1:大竹、森永=田中論争で、一部に漸く注目を集めるようになった感もあるが。

*2:80年代を含めた分析は、データ入手に手間がかかるのでpending。