ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

フリードリヒ・A・ハイエク「自由の条件[3] 福祉国家における自由」(1)

自由の条件3 ハイエク全集 1-7 新版

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第17章 社会主義の衰退と福祉国家の興隆

  • 政府の福祉活動が自由の脅威となる理由は、それらが単なるサービス活動として提供されるとしても、実際には、政府の強制力の行使を含み、排他的権利を要求すること。
  • (1)ある限度の保障で、全員にとって達成可能な、いかなる特権ともならない保障と、(2)絶対的な保障で、自由社会において全員にとっては達成不可能な保障を区別することが必要。もし政府が、全ての人にある標準の達成を望むなら、その点に関する全ての選択を個人から奪う。福祉国家は、家政国家となるだろう。
  • 企業独占の問題は、それほどの重要性を持たない。特定の独占に対する政府の自由裁量的活動の有益性には懐疑的。企業の大きさの制限を目的とするあらゆる政策の恣意的性質には、重大な不安を感じる。

第18章 労働組合と雇用

  • 労働者の自発的な団結が合法化された途端に、組合は、気の進まない労働者に対して組合員になるよう強制し、被組合員は雇用させないようにしはじめた。いたるところで、組合の法制化により、その目的(全労働社の徹底的かつ包括的な組織化)は、公衆の利益のために支持されなければならないものとなった。
  • 実質賃金は、労働者の供給を制限することによってのみ、自由市場で成り立つ水準を超えて上昇させることができる。このため、より高い賃金で雇用される人々の利益は、より低い賃金で雇用される者や失業者の利益と対立する。組合の活動は、必然的に労働の生産性を低下させ、実質賃金の一般的水準をも低下させる。特定集団の賃金の安定性は、雇用のより大きな不安定性をともなう傾向がある。組合は、資本投資の大きなところで最も強力であるから、投資の妨害になり、組合と企業との共謀が、しばしば独占の主要な基礎の一つとなる。
  • 組合の強制力は、どんな目的に対しても許されないと思われる、個人の私的領域の保護に背く方法(ピケット等)の利用に基礎をおく。組合の経営活動への参加要求である「産業民主主義」は、労働者と消費者との利害、あるいは専従の企業管理者との利害が相反するため、固有の矛盾を持つ。
  • 完全雇用の義務は、金融・財政当局に課されており、組合活動の結果から失業が生じることを阻止するため、インフレーションを生むに至る。
  • 労働の世界においても、操縦機構としての市場の排除は、行政管理機構による市場の置き換えを必要とする。もし市場による賃金の非人格的決定に依存できないとなれば、活力のある経済制度を保持できる唯一の方法は、政府の権威によって賃金を決めさせること。このような決定は、適用できる公正の客観的基準がないため、恣意的なものとなる。

第19章 社会保障

  • 独占的な政府サービスは、契約とは無関係に、必要への配分の原則に基づいて行動できる。庇護された独占は、時の経過とともに非能率となり、また、福祉に対してより大きく貢献したかも知れない他の組織の発展を妨げる。福祉国家の技術は、「公正な分配」をもたらそうとして、それが適当とみなす比率と形態で所得を与えるものであるから、社会主義の古い目標を追い求める新しい手段に過ぎない。
  • 政府が老齢者に対する「適当な」保障をしようとするとき、(1)払い込みを通じて保護の請求権を得た者ばかりでなく、まだ払い込みをする時間を持たなかった者にも与えられ、(2)年金が満期に達するとき、その目的のために蓄積された追加資本の生み出したものばかりでなく、現に生産に従事している者の労働の果実の一部が移転される、という2つの重要な段階を経る。
  • 無料の医療保険給付に賛成する者は、ある特定の場合に、どれほどの看護と努力が要求されるかを判定する客観的基準はなく、医薬の進歩とともに、客観的に可能なことを全て実施する場合に、どれほどの額を費やし経済的に引き合うのかについて、いかなる限度も存在しないという事実を見誤る。厳しいこととみえようが、自由な制度の下では、老齢で致命的な病人をある程度無視するという犠牲の下に、一時的で危険でない程度の労働不能者をいち早く治療することがしばしばある。
  • 自由社会におけるこれらの問題の解決策は、(1)国家は、自らを養うことのできない者全員にある均一の最低限の世話を行い、(2)周期的失業を適切な通貨政策によってできるだけ減らす努力をすること。それ以上の世話を求めて慣習的な基準を維持する必要があれば、それは、競争的で自発的な努力に任せる。この後者の分野において、労働組合は、ひとたび全ての強制力を取り外された場合に最も有益な貢献をする。

第20章 課税と再分配

  • 累進課税高所得者に対する比例的重課税以上の高課税)に科学的正当化を与えているのは、消費行動における限界効用逓減という概念。しかし、効用分析それ自体の近年の発展により、異なる個人間の効用を比較する可能性に関する信念が、一般的に放棄されてしまった。また、労苦によって表される所得の効用逓減という主張は、奇妙な結論を導く。
  • 一般的に、最も多数の投票者を占める中程度の所得の人達の負担が、最も低くなる傾向がある。少数者に対して多数者が差別を行う誘惑である場合、見せかけの公正の原則は、純然たる恣意の口実とならざるを得ない。
  • 資源を効率的に利用すべきであるとすれば、特定のサービスに対して受け取る相対的報酬は、課税後も、市場の決定するままにしておくことが重要。インセンティブに与える影響は、累進課税の最も有害な影響では決してない。例えば、このような課税は、危険の多い冒険的事業に不利な差別をする。新規参入者に対して既存法人企業の地位を強化する傾向があり、準独占の状態を作り出すのに力を貸す。