ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

大竹文雄、橘木俊詔「最低賃金を考える」(日本労働研究雑誌 2008.4)

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2008/04/pdf/002-011.pdf

 最低賃金をどう考えるかに関してよくまとまった(ネットで読める)論文としては、既に下のものがある。

 この対談も、近年の最低賃金をめぐる議論を広く、バランスよく網羅しているという意味で、読む価値がある。最低賃金の「定義」から始まり、需要独占の場合は最低賃金を引き上げることはむしろ雇用を拡大すること、米国におけるカード=クルーガー/ニューマークの論争点、そして最後には、中小企業に対する大企業の優越的地位乱用の問題*1まで、幅広く論じられている。
 また、下のような論点は、そのことに賛同するかどうかは別としても、こうした考え方もあるという意味で読んでおく価値はあるだろう。

  • 最低賃金は「食えない」賃金であり、そういう賃金しか出せない企業は非効率。(総需要拡大のためのマクロ政策をとった上で)最低賃金を引き上げ、企業の淘汰を促進するべき。
  • 最低賃金で働く人は、「サーチ」(職探し)を十分にしていない。(最低賃金のオファーを禁止することで)たとえ失業期間が長くなっても、よい仕事に就くことは本人にとってもよい。

 なお、本対談の中で、大竹氏が行動経済学の観点から金利上限規制を肯定している点を取り上げ、これを「パターナリズム」に関係させて論じている人もいるようであるが、これはあくまで、経済の「効率」(幸福度の要素を含めた上での)の観点からのものであることは、下の(大竹氏の)発言をみればわかると思う。

 (最低賃金法は)一概にあった方がいいということではなく、そこは人間の合理性や資産の状況によると考えています。

 ほかにも目についたところでは、小倉一哉氏によるワークシェアリングをめぐる2001年頃の喧噪の回顧など、面白い論文が多数あります。

*1:02/02/07付けエントリーを参照。ほかには、Baatarismさんのところでの議論(コメント欄)も。