備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

真の失業率──2017年2月までのデータによる更新

完全失業率によって雇用情勢を判断する場合、不況時に 就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発生することで、完全失業率が低下し、雇用情勢の悪化を過小評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる方法で推計した「真の失業率」を最新のデータを加えて更新した。

完全失業率(季節調整値)は2.8%と前月よりも0.2ポイント改善し、真の失業率も3.1%と前月よりも0.1ポイント改善した。引き続き真の失業率は減少基調である。

所定内給与と消費者物価の相関に関する1月までの結果は以下のようになる。これまでの動きよりも物価に上昇傾向が現われ、賃金にも上昇の兆しがあるが物価の伸びには追い付かず、実質賃金は当面、停滞する可能性が高い。

https://www.dropbox.com/s/fixt1abitfo58ee/nbu_ts.csv?dl=0

真の失業率──2017年1⽉までのデータによる更新

完全失業率によって雇用情勢を判断する場合、不況時に 就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発生することで、完全失業率が低下し、雇用情勢の悪化を過小評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる方法で推計した「真の失業率」を最新のデータを加えて更新した。今回は、推計の基礎となる潜在的労働力率を2016年まで延長推計た上で、2017年1月までの結果を過去に遡って再計算した。

まず、年間の結果をみると、足許の2016年の真の失業率は3.5%で、前年よりも1.0ポイント低下した。また、公表値の完全失業率3.1%に対して0.4ポイントの開きがある。前回の推計値と比較すると、潜在的労働力率が変化したことにより、真の失業率は上振れしている(2015年の値で約0.4ポイ ント程度の上振れ)。改訂による年齢階級別潜在的労働力率の上昇幅は引き続き大きなものとなり、真の失業率の改定幅は、前回改訂時をやや上回った。

つぎに、1月の月次結果をみると、完全失業率(季節調整値)は3.0%と前月よりも0.1ポイント改善し、真の失業率(改訂後)も3.2%と前月よりも0.1ポイント改善した。引き続き真の失業率は減少基調である。(12月の真の失業率は、前回は2.5%としていたが、改訂により足許で0.8ポイント程度上振れし、3.3%となった。)

所定内給与と消費者物価の相関に関する12月までの結果は以下のようになる。賃金および物価は、引き続き停滞している。

(付記)
コメント欄でのリクエストに応え、今回、潜在労働力率に補正を行わない「真の失業率」を推計した(年間値のみ)。

補正を行わない場合、その分、潜在労働力人口および推計上の(真の)失業者数が下方修正され、相対的に就業者数の割合が増えるため、修正後の「真の失業率」の水準は低くなる。具体的には、1995年から徐々に失業率の修正幅が大きくなり、2008年のピークでマイナス0.5ポイント、その後は修正幅がしだいに小さくなり、足許の2016年でマイナス0.4ポイントとなる。
水準の違いはあるものの、特に足許の動向としてみる分には双方の推計値にさしたる違いはない。すなわち、「真の失業率」の水準についての哲学的議論に興味がある向きは兎も角、経済動向を考える上では、この推計結果にそれ程の意味はない。

https://dl.dropboxusercontent.com/u/19538273/nbu_ts.csv

真の失業率──2016年12⽉までのデータによる更新

完全失業率によって雇⽤情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発⽣することで、完全失業率が低下し、雇⽤情勢の悪化を過⼩評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる⽅法で推計した「真の失業率」を最新のデータを加えて更新した。

12⽉の完全失業率(季節調整値)は3.1%と前年同月と同水準となったが、真の失業率は2.5%と前年同⽉から0.2ポイント低下した。真の失業率は、引き続き減少基調であり、現推計時点において基準年*1である1992年より改善していることとなる。

なお、真の失業率の推計に用いる潜在的労働力人口(比率)は1年間の数値が確定した段階で新たに計算し直すこととしており、次回、今回の12月分を含む過去分の数値を遡って改訂することとする。

所定内給与と消費者物価の相関に関する11⽉までの結果は以下のようになる。賃⾦及び物価は、引き続き停滞している。

https://dl.dropboxusercontent.com/u/19538273/nbu_ts.csv

*1:本推計において完全雇⽤が達成しているとみなす年。

真の失業率──2016年11月までのデータによる更新

完全失業率によって雇用情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発生することで、完全失業率が低下し、雇用情勢の悪化を過小評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる方法で推計した「真の失業率」を最新のデータを加えて更新した。

11月の完全失業率(季節調整値)は3.1%と前年よりも0.1ポイント上昇したが、真の失業率は2.7%と前年同月から0.1ポイント低下した。真の失業率は、引き続き減少基調であり、現推計時点において基準年*1である1992年より改善していることとなる。真の失業率が低下傾向にあることの背景には、非労働力人口(主として、仕事をしておらず、求職活動もしていない者)の人数の大幅な低下傾向がある。

所定内給与と消費者物価の相関に関する10月までの結果は以下のようになる。賃金及び物価は、引き続き停滞している。

https://dl.dropboxusercontent.com/u/19538273/nbu_ts.csv

*1:本推計において完全雇用が達成しているとみなす年。

今年の15冊

 恒例ですので、今年もこのエントリーを書くことにします。今年は久方ぶりに、ツボに嵌る読書経験ができたように思います。他に嵌ったものとしては、コーセラの機械学習講義(by Andrew Ng)、慶応大学の数理物理講義(藤谷洋平)、iPadにインストールしたTex Writer & Verbosus / Anoc等々。今更ですが、最近のオープンオンラインコースの充実ぶりには目を見張るものがあります(つくづく、人生をやり直したくなります・・・)。

國重惇史『住友銀行秘史』

 イトマン事件は自分にとって同時代史とはいえないものの、戦後最大級の経済事件であり、記憶には残る。今年は山崎拓YKK秘録』なども読んだが、登場人物が重なっていたりして興味深かった。時代の空気は今とはかなり違う。ところで山崎前掲書について、自分にとっては同時代史であるため、「書かれていないこと」についても当時の報道など懐かしく思い出すわけだが、今の若い人にとっては素っ気なく感じるかも。

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真の失業率──2016年10月までのデータによる更新

完全失業率によって雇⽤情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発⽣することで、完全失業率が低下し、雇⽤情勢の悪化を過⼩評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる⽅法で推計した「真の失業率」を最新のデータを加えて更新した。

10⽉の完全失業率(季節調整値)は3.0%と前年同⽉と同水準となったが、真の失業率は2.8%と前年同⽉から0.1ポイント低下した。真の失業率は、引き続き減少基調である。真の失業率は、現推計時点において基準年*1である1992年より改善していることとなる。また、インフレ率が低下する中で完全失業率は改善しており、フィリップス・カーブはこのところ逆相関の動きである。

所定内給与と消費者物価の相関に関する9⽉までの結果は以下のようになる。賃⾦は引き続き停滞しており、物価は低下傾向である。

https://dl.dropboxusercontent.com/u/19538273/nbu_ts.csv

*1:本推計において完全雇用が達成しているとみなす年。

真の失業率──2016年9⽉までのデータによる更新

完全失業率によって雇⽤情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発⽣することで、完全失業率が低下し、雇⽤情勢の悪化を過⼩評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる⽅法で推計した「真の失業率」を最新のデータを加えて更新した。

9⽉の完全失業率(季節調整値)は3.0%と前年同⽉から0.1ポイント低下、真の失業率も2.9%と前年同⽉から0.1ポイント低下した。真の失業率は、引き続き減少基調である。真の失業率は前月に引き続き完全失業率よりも低い水準となり、現推計時点において、雇用情勢は基準年*1である1992年よりも改善していることとなる。また、引き続きインフレ率が低下する中で完全失業率は改善しており、フィリップス・カーブはこのところ逆相関の動きである。

所定内給与と消費者物価の相関に関する8⽉までの結果は以下のようになる。賃⾦は4⽉以降減少に転じていたが、5月を底に再び上昇し、その後は停滞している。一方、物価は引き続き低下傾向である。

https://dl.dropboxusercontent.com/u/19538273/nbu_ts.csv

*1:本推計において完全雇用が達成しているとみなす年。