- 15〜34歳の非労働力人口のうち、通学と家事手伝いを除いた者をニートと定義すると、都道府県別のニートの(若年)人口比と失業率の関係には相関がある。ニート人口比を雇用環境要因(15〜34歳失業率)、学校教育要因(不登校児童出現率)、経済的要因(親と同居する独身の15〜34歳人口割合)を説明変数として分解すると、それぞれ39.9%、19.0%、27.1%で有意。
- マクロの労働需給の逼迫が見込まれるが、それに伴って若年雇用環境が改善し、ニートの増加にも歯止めがかかるとの見通しは短絡的。若年雇用のミスマッチは深刻化し、15〜34歳の均衡失業率は急上昇。このため、政府はミスマッチ解消策を採るべきであり、特に①自己啓発による能力開発への側面支援、②各種職業訓練の充実が考えられる。
- 有効な雇用対策・ニート対策が採られない場合、トレンドでは2015年にニートは約100万人を超える。均衡失業率が解消し、不登校児童出現率が半減すると仮定して推計すると、ニート人口は79.5万人となり、29.8万人抑制することが可能。
コメント この論文には、①均衡失業率の解消と提示されているミスマッチ解消策との間に何の関係もなく、②最後の推計において、均衡失業率=0というほぼあり得ない仮定をおくという2つの大きな問題がある。従って、最後のニート抑制効果の推計には何の意味もない。実際、論文中のニート人口比は、実際の失業率に連動しており、均衡失業率にしてもベバレッジ曲線の動き方から考えれば、それらの中に総需要不足を要因とする要素がかなり含まれることが想定される。ここから得るべき知見は、むしろ粘り強い総需要対策が重要ということになるのではないか。