不況のメカニズム―ケインズ『一般理論』から新たな「不況動学」へ (中公新書)
- 作者: 小野善康
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2007/04
- メディア: 新書
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08/21/07付けエントリーは本書について書いたものではないが、一部の論点は本書に対しても当てはまるように思う。本書に関して気になっている論点は以下の通り。
- 不況が「特殊な状況」であるとの見方をせず、不況均衡のような状況も生じ得るとする点。また、この点は、ニュー・ケインジアンとは明確に異なるとしている。その背景には、「有効需要の原理」によって、逆向きの因果関係で物価や賃金が決定されるとの見方がある。
- 中央銀行が量的緩和や低金利政策へのコミットメントを行っても、(流動性プレミアムは低下せず、)民間投資は拡大しないとする点。その背景には、流動性はいくら増えても飽和することはないとの見方と、期待の効果への軽視がある。期待を重視する立場からすると、公共事業は非自発的失業がある中にあっても将来の増税に対する懸念からその効果は小さく、マクロ経済政策は金融政策が中心となる。
- 資本設備が十分に蓄積された社会では、投資機会は最終的に消滅するとの点。この点は、「流動性の罠」の議論以上に強調されているように見受けられる。(ソロー・モデル的には、均斉成長経路に至れば投資の水準は定常化するが、貯蓄率の上昇があれば再び投資は拡大する。)
なお、(1)効率性に関する論点、(2)消費関数と乗数効果、(3)流動性の罠と投資の消滅、といった個別の論点から、(4)不況動学へと続く内容については、いずれまたエントリーする(かも...)
(関連)
- 「不況のメカニズム」合評会メモ(日々一考(ver2.0))
- その後の懇親会メモ(Economics Lovers Live)