ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

子育て世帯に対する子ども手当の支給は、少子化対策の正攻法ではない

id:ari_satoさんのエントリーにコメントしました。また、ブックマーク等で子ども手当が第2・3子の出産支援に役立つとのコメントがみられますが、2000年から2005年の間の有配偶女性の産む子供の数が増加した要因(0.05)のうち、第2子の寄与は0.02、第3子以降の寄与は▲0.01であり、これらの合計はやはり増加寄与になります。(09/09/25)

 合計特殊出生率とは、一般に、一人の女性が一生に産む子供の数、という定義で知られている。しかし実際には、15〜49歳の女性について年齢ごとに1年間の出生率を求め、それを合計した「期間合計特殊出生率」の数値が広く流通している。

日本の合計特殊出生率は、上図のように1970年代以来下がり続けているが、その低下の要因についてさまざまな場面で語られているものの、常にその議論は忘れ去られているような気がする。最近でも、民主党子ども手当少子化問題をつなげて語られるようなケースはあるが、この政策は、子育て世帯の負担の軽減には役立つ*1ものの、それによって少子化問題に大きく寄与するようなものではない。
 なぜなら、日本の少子化は、結婚した世帯が一生涯に産む子供の数の減少によって生じたものではなく、有配偶率の低下(つまり、晩婚化や非婚化)によって生じているものだからである。
 日本では、結婚していない女性が子供を産むケースはきわめて少ないため、合計特殊出生率の増加(減少)は、(1) 有配偶女性の産む子供の数が増加(減少)した要因と、(2) 女性の有配偶率が上昇した要因、の2つに分解することができる。*2
 ある年の合計特殊出生率は、数式によって次のように表現される。

ただし、TFR:合計特殊出生率、Cp:年齢pの女性が一年間に産んだ子供の数、Fp:年齢pの女性の数、MFp:年齢pの有配偶女性、である。ここで、cp:年齢pの有配偶女性に対する年齢pの女性が生んだ子供の数の比、mp:年齢pの女性の有配偶率とすると、合計特殊出生率の増加(減少)は下のようになる。

ここで右辺第一項を上述した(1)の要因、右辺第二項を(2)の要因と考えることができる。その上で、国勢調査の調査年である1995年から2005年までの5年ごとの合計特殊出生率の変化を2つの要因に分けてみると次のようになる。

この表から明らかにわかるとおり、近年の出生率の低下は有配偶率の低下によるものであり、結婚した世帯が産む子供の数はむしろ増えているのである。つまり、少子化問題への対応の正攻法は、有配偶者の子育て支援ではなく、結婚したい男女がその機会に恵まれることや、結婚せずとも子育てが容易になるような社会にすることであり、それにも増して、移民政策が絡んでくる話題である。*3
 ちなみに、女性の未婚率の高まりは、いわゆるM字カーブのフラット化ともつながりがある。

*1:また、子育てによって厳しい予算の制約を受ける家計では、消費の浮揚も期待される。

*2:非嫡出子の影響は、(1)の要因を0.01引き上げる程度である。

*3:最近話題になった上野泰也氏の論説も、実際のところ、移民政策の推進を意図したものだろう。