備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

2005-01-01から1年間の記事一覧

雇用形式などに関する備忘録的整理(その1)

9月以降のエントリーにおいて、いくつか日本的な長期的・安定的な雇用システムの優位性について言及しながら、うまく整理できていないような違和感があり、現段階で、少し整理できた感が見えてきたので、備忘録的に整理しておく。 (方法論的)個人主義とい…

「生保経営の質が変わった」(浅谷輝雄 SOHOからのメッセージ)

また保険事業の監督が旧大蔵省にあった最後の時期に、外国の再保険会社の口車に乗せられて良い債務内容改善の保険だと信じて認めた財務再保険がまだ生きているのは不思議である。官僚というものは、先輩が認めたものは先例として尊重する傾向があるからか。…

稲葉振一郎「「資本」論」

「資本」論―取引する身体/取引される身体 (ちくま新書)作者: 稲葉振一郎出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2005/09/06メディア: 新書購入: 5人 クリック: 50回この商品を含むブログ (100件) を見る第1章 「所有」論 ボッブズの考える「自然状態」が自然権と…

大竹文雄「日本の不平等 格差社会の幻想と未来」(その1)

日本の不平等作者: 大竹文雄出版社/メーカー: 日本経済新聞社発売日: 2005/05/24メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 50回この商品を含むブログ (49件) を見る第1章 所得格差は拡大したのか 世帯所得の不平等度を考える場合、世帯人員数の影響を受ける。そ…

松谷明彦、藤正巖「人口減少社会の設計 幸福な未来への経済学」

人口減少社会の設計―幸福な未来への経済学 (中公新書)作者: 松谷明彦,藤正巌出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2002/06/01メディア: 新書購入: 2人 クリック: 25回この商品を含むブログ (26件) を見る第1章 人口減少社会がくる 第2章 人口増加は何をも…

原田泰「世相でたどる日本経済」

世相でたどる日本経済 (日経ビジネス人文庫)作者: 原田泰出版社/メーカー: 日本経済新聞社発売日: 2005/06メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログ (10件) を見る 日本が経済的に発展してきたのは、日本社会のなかでプロフィット・シーキング活動…

「A Working Model」(Economist)

IS(investment/saving) curveは財市場の均衡。投資=貯蓄となる産出量と金利の関係を示す(右下がり)。LM(liquidity/money) curveは金融市場の均衡。貨幣需要が供給と一致する産出量と金利の関係を示す(右上がり)。*1両者の交点において、財市場と金融市…

清水谷論「期待と不確実性の経済学」

期待と不確実性の経済学作者: 清水谷諭出版社/メーカー: 日本経済新聞社発売日: 2005/02メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 45回この商品を含むブログ (14件) を見るプロローグ マクロ経済政策のミクロ的実証を 70年代以後、いわゆる「ルーカス批判」をき…

「産業構造審議会産業金融部会中間報告−次世代の企業財務と産業金融機能のあり方について」(経済産業省)

コメント ミクロの観点から、金融・資本市場の基盤整備を唱えるものであるが、マクロの観点からみた資金需要の実態からは、その重要性は小さいと言えるのではないか。あるいは、多様なファイナンス手法が制度的に整備されることで、新たな資金需要が生まれる…

呉敬蓀×青木昌彦「リアルチャイナ 成長モデルの限界見つめよ」(日経ビジネス 07/18号)

(呉)中国のこれまでの成長は、資本の大規模な投入に依存したものであるが、私見では、このような成長モデルには一定の限界。(青木)中国がグローバル経済と調和をとりながら、安定した発展を維持するには、エネルギーと環境が大きな制約。 (呉)先進資本…

高橋伸夫「10年先にあるべき経営を自ら考えよう」(日経BPインタビュー)

株主への配当を除けば、成果配分には二つの方法があるということなのです。一つは「賃金」、もう一つが(中略)「投資」で、投資には必ず仕事がついてきます。ところが、人事コンサルタントや賃金の専門家は、成果配分というと賃金しか思い浮かばない。成果…

小林慶一郎「誰のための財政再建か」(MM日本国の研究 08/04/05発行)

財政赤字の対GDP比は約8%程度で推移しており、このままでは債務比率は無限大になるため、財政運営は長期持続的なものではない。ただし、政府は約430兆円の金融資産を持っており、これを差し引いた純債務はGDPの約70%程度。欧米と比較しても、必ずしも悪いも…

07/08付けエントリーに関連して、「希望格差社会」(内田樹の研究室)

「リスク社会」とは何か、山田さんはこう説明する。それは「リスクをとることを強制される社会」、「選択を強制される社会」のことである。「自分のことに対しては、自分が決定する。これが自己決定の原則である。そして、自分で選択したことの結果に対して…

郵政民営化関連6法案(内閣官房郵政民営化準備室)

本日の参院本会議にて否決、廃案。今後は、当面の公社形態を暫く継続するか、妥協案として郵便事業と窓口ネットワークのみを公社形態とするか、といったところであろうが、前者については、現行公社の経営手法では、様々な分野で弊害やコンフリクトが生じる…

損保委員会 実務基準部会(日本アクチュアリー会)

http://www.actuaries.jp/comm/sonpo_jitumkjn.html

ニート問題に関する備忘録的整理(その2)

前回は、「ニート」と呼ばれる者について、内田樹「資本主義の黄昏」(05/19日付けエントリー参照)で論じられるような者を真性ニートと考えると、リフレ期において非労働力人口から失業者または就業者へ移るような若年無業者等*1は別のカテゴリーとなる点を…

ベネット・マッカラム「金融政策の最適性に関する適切なパースペクティブは何か?」(IMES Discussion Paper Series)

1.はじめに2.モデルの定式化の例 標準的に認められるモデルに基づき、中央銀行は、時間t=1において、条件式の条件の下で、次のL1を最小化しようとすると仮定。民間経済主体の割引率D_1は、中央銀行の割引率Dと異なり得るが、さしあたりD_1=Dと仮定。 L1=…

永井均「私・今・そして神」(その3)

私・今・そして神 開闢の哲学 (講談社現代新書)作者: 永井均出版社/メーカー: 講談社発売日: 2004/10/19メディア: 新書購入: 4人 クリック: 30回この商品を含むブログ (102件) を見る06/26付けエントリー中、第3章に追記。その上で、 この言語(中略)の、…

"RISK & CAPITAL versus RETURN: Finding the Balance"(Guy Carpenter)

今日、保険会社は、引受リスクを支える資本の維持と資本効率の向上という二つの命題の狭間で、難しい舵取りを迫られています。保険監督当局や格付機関は、資本の充足率に関わるより厳格な基準を定め、保険会社が保有するリスクを支えるに十分な資本を維持す…

「切実な求めと有効需要」(労働、社会問題)

今回の調査結果の目玉は、高齢者福祉関係の事業所と従業員の急増でしょう。(中略)介護保険制度により、様々な規制が行われています。また、介護保険料の分だけ国民負担は増加しているのです。規制緩和に逆行する、公経済の拡大そのものです。(中略)適切…

「「人口減少下における雇用・労働政策の課題」すべての人が自律的に働くことができ、安心して生活できる社会を目指して(雇用政策研究会報告の取りまとめについて)」(厚生労働省)

現状のまま推移することのリスク・シナリオは、①経済社会を支える層が減少し、若年層をはじめ今後の我が国の産業を支える人材の質が低下し、生産性等の低下に繋がる、②格差が拡大し、将来に展望がもてないことによる社会の不安定化が加速する、③経済的理由に…

内藤武史「ペット供養は課税か非課税か?」(大和総研)

永井均「ウィトゲンシュタイン入門」

ウィトゲンシュタイン入門 (ちくま新書)作者: 永井均出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1995/01/01メディア: 新書購入: 11人 クリック: 70回この商品を含むブログ (115件) を見る序章 ウィトゲンシュタインの光と陰 独我論をめぐっては、ウィトゲンシュタイ…

100日目

前回のエントリーにて達成。

吉本佳生「金融広告を読め どれが当たりで、どれがハズレか」

金融広告を読め どれが当たりで、どれがハズレか (光文社新書)作者: 吉本佳生出版社/メーカー: 光文社発売日: 2005/05/17メディア: 新書購入: 3人 クリック: 45回この商品を含むブログ (59件) を見るコメント 金融機関が家計向けに提供するサービスは商品で…

根井雅弘「経済学のことば」

経済学のことば (講談社現代新書)作者: 根井雅弘出版社/メーカー: 講談社発売日: 2004/11/19メディア: 新書 クリック: 4回この商品を含むブログ (4件) を見る第1部 古典派経済学のことば−経済学の生誕前夜からマルクスまで ペティ、ステュアート、カンティ…

川俣雅弘「20世紀の経済学における序数主義の終焉」に関連して、基本概念に係る備忘録

序数的効用とは、その数量的表現が大小関係のみ意味を持つ効用。効用水準の値や差に関する経済学的意味はない。反対概念として、基数的効用。 ゲーテルの完全性定理:述語論理の公理系は無矛盾であるならば論理的妥当であり、論理的に妥当なものは全て証明で…

田中秀臣「会社の社会責任の基礎を求めて−岩井克人氏の新刊を読んで−」(ノーガード経済論戦)

日本的経営とCSRとの関係がわたしにはあまりよくわからなかった。前者にある会社に帰属するヒト同士の「信任関係」の厚い鎖(これは悲惨な面も生産性を上昇させたり職場環境を改善する面もある)を、いかにして会社の外の社会への「信任関係」に進化させてい…

「家電萌えと同時爆弾テロ」(isologue - by 磯崎哲也事務所)

コメント 食器洗浄機やカーナビのようなマニアックな製品が日本で「うける」のは日本の人件費が高いからであり、低賃金労働と家電が代替関係にある場合にはそのような家電は発達しない。国家50年の計を考える場合、日本の移民政策を変更し無理をして労働供給…

西村清彦「日本経済 見えざる構造転換」

日本経済 見えざる構造転換作者: 西村清彦出版社/メーカー: 日本経済新聞社発売日: 2004/09メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (4件) を見る第1章 見えざる構造転換 第2章 日本企業の「凋落」−「成功」が呼び起こした「失敗」 米国経済が…