雇用システム
先日のエントリー「偽装請負と日本的雇用慣行」に対して、bewaadさんからまたまたコメントを頂いた。経済学的な論理としては、bewaadさんの議論は妥当だなと思いつつ、何か言わなきゃという気持ちもあるので、少しコメントしてみる。頂いたコメントの概要は…
「フリーターが語る渡り奉公人事情」からトラックバックを頂いた。その趣旨は、よく理解できなかったのだが、気になったのは、 高原基彰氏が、フリーター問題について、問われているのは日本国内の開発主義とその既得権益層だとの議論を提出しているが、これ…
第1回 学校から仕事へ:労働市場から見た現代日本 日本の工業化が軌道に乗りだした20世紀当初、日本の労働市場の特徴は高い異動率(1年間の平均移動率100%)。腕の良い職人程工場から工場へと移り(渡り職人)、親方職工による間接的な雇用管理。 日露戦…
報告書の内容 hamachan先生のお薦め。総論にあたる第2部第2章まで読了。ここまでの内容を自分なりに要約してみようと思うが、まず、雇用戦略を策定するにあたって、経済・社会環境の変化や我が国及び諸外国の雇用政策・雇用戦略について、以下のように整理…
BI@Kでは、毎月、「真の失業率」なる試算値を掲載している。これは、(1)完全失業率の分母である労働力人口について、労働力人口比率が0.64(直近ピークの1992年)であると仮定し、これを15歳以上人口に乗じた値とする、(2)完全失業率の分子である失業者…
コメント 若年雇用問題と解雇規制に関しては、既に論じているので今さら触れる必要もないのだが、本記事の立論の仕方には極めて違和感を感じるので、あえて触れることにする。 この記事の立論によれば、①格差問題の隠れた大きな論点は学歴偏重→②本当の才能が…
私は90年代という時期、あるいは日本の労働市場という特殊性を考慮に入れれば、既存正社員の賃金を引き下げることで(若年に対する)正社員雇用の需要が増加するとしても、それには相当程度の大幅な賃金引き下げが必要であり、さらに需要増加の効果も限られ…
上記エントリーでは、若年雇用問題、とくに「フリーター」に代表される不安定な就業を行う者の問題をいかに解決するかについて、「①非正規労働にみられる基幹化の流れに応じ、その処遇を正社員との均衡がとれたものにしていくこと、②現在、欧州大陸諸国と同…
第二は、既存労働者の既得権を過度に守らないようにすることである。解雇権濫用法理では、従業員の解雇を行うためには、新規採用を抑制して雇用維持努力をしていることを一つの要件としてあげている。既存労働者の雇用保障の程度が高ければ高いほど、既存労…
問題の全景を充分に把握していない可能性は留保しつつ、取りあえずまとめてみる。「若年問題を経路」として問題提起すべき、とした意図は、中高年化しつつある「フリーター」には、階層化の傾向がみられることが背景にある。それと、以前のエントリーで触れ…
(追記)思いの外、議論が拡張しつつあるので整理します。 「大橋勇雄・中村二朗『労働市場の経済学』有斐閣」(もじれの日々):話の発端となった書籍の本田由紀先生による紹介。 「パートタイム労働者の賃金 その1」(労働、社会問題):平家さんによる最…
「ニート」って言うな! (光文社新書)作者: 本田由紀,内藤朝雄,後藤和智出版社/メーカー: 光文社発売日: 2006/01/17メディア: 新書購入: 17人 クリック: 420回この商品を含むブログ (286件) を見る第1部 「現実」−「ニート」論という奇妙な幻影 「無業者」は…
これまでの関連エントリーの総括:09/22→09/28→10/28→11/06→11/01→本日のエントリー これまでの議論とも関連するが、長期的・安定的雇用システムの中にあった労働者に対して覚醒を促すようなメッセージが一定の妥当性を持ちうることは否定できない。その場合…
前回のエントリーに関連して。「竹中平蔵公式ウェブサイト」におけるある文章があちこちで話題になっている。こうしたいわゆる雇用流動化論*1についての自分の見方は、前回及び前々回のエントリーの通りだし、11/01付けエントリーのコメントを含めて特に付け…
前回の続き。前回は、日本的な長期・安定的な雇用システムを福祉社会の機能として考えること、また、若年層については、合理的な個人としてみなしうるケースが相対的に少なくなるため、この層について、外部労働市場で評価され得る限りでの「資産」の所有者…
私は同感しないが、関係者のなかには、著者が「フリーター」や「ニート」といった概念を煽情的に(?)用いていることへの批判、反発もあるという。*1しかし、著者が『仕事の中の曖昧な不安』などによって、それまでともすれば「中高年失業」の問題ばかりに…
アトキンソンによる概念であり、企業が、人材活用面での量的・質的な変動への対応可能性を向上し、労働市場の需給や経済環境において適切な労働費用を実現することを目指したもの。 有期契約社員や、業務の外部化により「数量的柔軟性」を向上させるとともに…
人口減少は、市場原理(資本の論理)を徹底させ、競争の激化・高収益性の追求を加速。このため、「労働需要の高度化・柔軟化・流動化」を促進し、専門職・技能工の人材不足を一層深刻化。我が国の産業構造の向かう方向性は「第2次産業と第3次産業の融合を通…
9月以降のエントリーにおいて、いくつか日本的な長期的・安定的な雇用システムの優位性について言及しながら、うまく整理できていないような違和感があり、現段階で、少し整理できた感が見えてきたので、備忘録的に整理しておく。 (方法論的)個人主義とい…
前回は、「ニート」と呼ばれる者について、内田樹「資本主義の黄昏」(05/19日付けエントリー参照)で論じられるような者を真性ニートと考えると、リフレ期において非労働力人口から失業者または就業者へ移るような若年無業者等*1は別のカテゴリーとなる点を…
現状のまま推移することのリスク・シナリオは、①経済社会を支える層が減少し、若年層をはじめ今後の我が国の産業を支える人材の質が低下し、生産性等の低下に繋がる、②格差が拡大し、将来に展望がもてないことによる社会の不安定化が加速する、③経済的理由に…
正社員・非正社員の処遇格差の是正に繋がる動きとして、①成果主義賃金の導入、②契約社員、派遣社員、インディペンデント・コントラクター等非正社員内での多様な就業形態の生成、③大手スーパーにおける「正社員的パート」の登場等正社員・パートの中間形態の…
引き続きドーア物。「働くということ」をタイトルとする書籍の変遷については、興味深いところ。また、ILOの理念には、市場個人主義を主導し拡散させる「コスモクラット」をも説得する可能性があることを強調(特に「一部の貧困は、全体の繁栄にとって危険」…
ニートのカテゴライズに関しては、各種先行研究をフォローしてから論ずべきであるが*1、当面の備忘録的整理としては、適切なアナウンスがないためにニートになった者(仮に〈村上龍〉的ニートとしておく)と、働くことの有意味性を失った者(仮に〈内田樹的…
小池理論の中核は「知的熟練」論。生産ラインで働く直接生産労働者の一見単調に見える労働には「普段の作業」と「普段と違った作業」があり、後者には機械の知識や生産の仕組みの知識が必要(「知的熟練」)。これは、企業特殊的熟練であり、長期勤続の下で…
働くということ - グローバル化と労働の新しい意味 (中公新書)作者: ロナルド・ドーア出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2005/04/25メディア: 新書購入: 10人 クリック: 193回この商品を含むブログ (69件) を見る第1章 労働の苦しみと喜び 21世紀のはじ…
雇用不安 (岩波新書)作者: 野村正實出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1998/07/21メディア: 新書購入: 1人 クリック: 5回この商品を含むブログ (13件) を見る第1章 日本の失業率の特異性 日本の雇用・失業構造の分析をする上での出発点は、?国際的にみた場…