- 作者: 清水真人
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2007/06
- メディア: 単行本
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小泉政権末期の政治模様
小泉政権末期から安倍政権成立までの時期(2005年末から2007年初頭まで)における経済財政政策、特に、「歳出歳入一体改革」をめぐる政治模様。この時期の特徴について、本書では、これまでの官邸主導が、郵政選挙を経て自民党内の情勢に変化が生じたことから、党政調会と官邸・諮問会議がそれぞれの役割を果たす中で改革を推進していく形に変化したことにあるとみている。また、主要登場人物が、財政タカ派(金利正常化派)と上げ潮派(ゼロ金利派)に色分けされ、特に、与謝野経済財政担当大臣と中川幹事長・竹中総務相との対立関係を軸に話が進む。この時期に諮問会議において展開された名目成長率・金利論争に関しては、安達誠司「円の足枷」や若田部昌澄「財務省は経済成長が嫌い」などが参考になる。
竹中担当相時代、諮問会議を主要な舞台として進められた政策決定過程の背後に、内閣府の「特命チーム」の存在があることは既に広く知られており、このスタイルは、与謝野担当相時代にも登場人物を変えて引き継がれたが、誰がどのようにそこに関与したのかが比較的詳しく記述されている。また、竹中氏は、学者としていかに異能の存在だったのかが、よく理解できる。*1
現在の政治過程は、小泉・安倍政権における官邸・諮問会議主導のスタイルから、再び、党政調会を中心に動いているようにも感じられる。また参院選以後は、民主党の意向も、無視し得ないものとなっている。諮問会議は、そうした状況の中で、自らの存在をどのように示していくのかが問われている。正しい経済政策の実現、政策決定過程の透明性の確保は、今後も永遠に続く課題であろう。