完全失業率によって雇用情勢を判断する場合、不況時に就業意欲を喪失し労働市場から退出する者が発生することで完全失業率が低下し、雇用情勢の悪化を過小評価することがある。この効果(就業意欲喪失効果)を補正し、完全失業率とは異なる方法で推計した「真の失業率」を最新のデータを加えて更新した。
※ 真の失業率のグラフは、後方12カ月移動平均から季節調整値に変更
8月の結果をみると、完全失業率(季節調整値)は3.0%と前月より0.1ポイント上昇したが、真の失業率は3.1%と前月(3.2%)より0.1ポイント低下した*1。
非自発的失業者は前年差で増加(7カ月連続)、非正規雇用の減少・正規雇用の増加傾向も継続している。完全失業者数は、主に(離職失業者ではない)新たな求職者により増加しており、非労働力人口からの流入が増加していると考えられる。このことは、足許における真の失業率の低下と平仄が合っている。
このところ話題となっている休業者の動きをみると、4月の前年差にみられた拡大幅は、引き続きしだいに縮小している。*2。
所定内給与と消費者物価の相関に関する7月までの結果は以下のようになる。賃金・物価には一時的な減少傾向がみられたが、再び増加方向へ転じている。
なお、新型コロナウイルスの蔓延によりパート労働者が減少、その構成比が低下している。パート労働者の構成比の低下は、相対的に賃金が高い一般労働者の構成比を高めることで、一人当たり賃金を引上げる効果を持つ。前年比でみた場合、足許で賃金は増加しているが、その効果によるところが大きく、一般労働者の所定内給与*3は4月以降、減少している。
(注)本稿推計の季節調整法を、2020年1月分から変更*4した。
(真の失業率のデータ(CSV)が必要な方はこちらへ)
https://www.dropbox.com/s/6cm8flun7au7lhb/nbu_ts.csv?dl=0