国家公務員の労働環境については、「生きながら人生の墓場に入った」*1という言葉が代表するように、その過酷さが話題となり、NHKが特集を組む*2など、一部で話題が尽きない状況となっている。
このような話が広まると、採用の現場にも一定の影響が生じることが考えられる。実際、今年度の国家公務員採用試験において、「総合職」の倍率は7.8倍で過去最低となり、東京大学出身者の割合も14%で6年連続で過去最低を更新したことが報道されている*3
しかしながら、昨年のエントリーでも指摘したように、採用倍率が過去最低水準であることは、少子化が進んだことによる帰結ともいえ、加えて、試験に合格しても就職を希望しない者は、理科系を中心に多数存在する。よって、東京大学法学部および経済学部の卒業生の進路から国家公務員就職者の割合をみることで、公務人気の実際を別の面から確認した。
昨年のエントリーから1年経過したことを踏まえ、本稿では、改めてデータの動きを確認する。
法学部
法学部について数字を経年的にみると、「その他」の人数は2020年に引き続き2021年においても高くなるが、過去のデータと同様、その理由は不明である。就職者に占める公務の比率は2011年の29.7%を底として2017年の41.0%までは上昇傾向、その後の2年間で比率は激減したが、2020年、2021年と2年連続で上昇した。人数でみても、2021年は65人と前年(44人)から持ち直している。
こうしてみると、法学部に関しては、国家公務員の労働環境に関するこのところの報道等は強い影響を与えず、一方、比率が低下した時期は、民主党政権、森友問題など政治的なイベントに関係している可能性がある。いずれにしても、法学部からの進路として、国家公務員は概ね安定して大きな位置を占めている。
経済学部
経済学部について就職者に占める公務の比率をみると、2016年以前は11~19%程度で変動していたものが、2017年に半減、さらに直近の2020年にも半減したが、2021年は上昇に転じた。ただし足許2年間の人数は12人、14人と、卒業者の主要な進路とはいえない状況となっている。
なお、経済学部からの就職先は、産業別には金融、保険業が他を圧倒して多くなっている。
(参考)
- 『学部卒業者の卒業後の状況(2021年3月卒業者)』(東京大学キャリアサポート室)