備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

03/23/06付けエントリー(若者の格差問題)に係る追記

 上記エントリーでは、若年雇用問題、とくに「フリーター」に代表される不安定な就業を行う者の問題をいかに解決するかについて、「①非正規労働にみられる基幹化の流れに応じ、その処遇を正社員との均衡がとれたものにしていくこと、②現在、欧州大陸諸国と同水準にある正社員の雇用保護規制を緩和し、アングロサクソン諸国並みにする」という二つの処方箋を提示したが、景気がロバストな回復過程にある現在、若者の格差問題にとってどちらの方策が有望なのかを考えてみる。
 まず、①については、非正規雇用の労働条件を直接的に改善することになり、正規雇用との労働条件面での格差は縮小する。一方、②については、非正規雇用への労働需要が相対的に縮小することで、結果的に格差は縮小される。よって、格差の縮小のためにどちらが有効か、ということは、現時点では不明である。
 次に、雇用・失業問題に与える影響を考えると、①については、やり方にもよるが、非正規雇用への労働需要が低下することで、短期的には若年失業率は上昇する。中長期的には、景気回復の度合いや設備面での省力化投資との兼ね合いで、労働需要が回復してくることはあり得る。②については、これまでの企業行動から考えると、短期的に失業が増加するとは思えないが、中長期的に考えると、需要面からは勤労者の期待に働き、消費に与えるマイナスの影響、供給面からは、特に企業特殊技能面での能力開発意欲が低下することが、労働生産性に与える影響、といった面が懸念される。
 いずれにしても、このような規制の変更によって直接的に企業行動に変化を与える施策には、原則として賛同できない。むしろ、助成金制度を活用することなどにより、企業に若年正規雇用を増やすようなインセンティブを与え、企業行動の変化に応じて、漸進的に規制も変更する(ビハンド・ザ・カーブw)ことが望ましいのではないか。
 なお、雇用保護規制については現状のままとしつつも、賃金や労働時間を柔軟に取り扱うことで、失業率の変動を緩和することについては、そのような制度の変更が漸進的なものである限り、許容し得るかも知れない。ただし、現在の景気情勢の下では、マクロ的なパイの拡大のため賃上げが望ましいことは言うまでもなく、仮に景気が悪化するような場合にも、一定の採用と雇用の確保が可能となるよう、賃金・労働時間を低下させることが可能な仕組みをもっておく、ということである。また、実質賃金引き下げの「糊代」として、緩やかなインフレにより、可能な限り名目賃金を維持していくことが望ましいことも当然であると思う。