ラスカルの備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

「再分配」の逆噴射により、家計の可処分所得は抑制

前回のエントリー*1では、一国全体の可処分所得の前年比について、所得支出勘定の項目別に寄与度を確認した。今回は、家計*2について、同様の分析を行う*3
ここで使用する所得支出勘定とは、推計期間内の生産過程で付け加えられた付加価値の分配を記録するもので、一国全体でみた場合は、①営業余剰・混合所得、②雇用者報酬、③生産・輸入品に課される税(除補助金)、④財産所得(純)、⑤その他の経常移転(純)の合計から可処分所得が推計される。ただし、家計などの制度部門別にみる場合は、これに制度部門間の移転項目が加わることになり、家計の場合は、⑥所得・富等に課される経常税、⑦社会負担(純)、⑧社会給付(除現物社会負担)の3項目が加わる。これら3項目は、一般政府など他の制度部門との間で相殺され、一国全体の可処分所得には影響しない、いわゆる「再分配」に当たるものである。

雇用者報酬は増加寄与となる一方、「再分配」項目は減少寄与が継続

実際の分析結果はつぎのようになる。

家計の可処分所得への寄与度をみると、概ね2年前の分析と同様の結果となる。②雇用者報酬が高いプラス寄与となる一方、⑥所得・富等に課される経常税や、⑦社会負担(純)がマイナス寄与となる*4。このように、②雇用者報酬は高い伸びを示しているものの、⑥、⑦などの「再分配」に係る項目が、近年、一般政府への移転傾向を高めたことにより、家計の可処分所得は抑制されていることがわかる。総務省『家計調査』によれば、この間、世帯の実収入は増える一方、実質消費支出は減少しており*5、この背景には、「再分配」の逆噴射による家計から一般政府への収奪的状況があったことがみてとれる。
なお、2年前のエントリーでも触れているが、過去の動きをみると、「再分配」に係る項目は、景気後退期にはむしろプラス寄与となることから、景気変動を自動的に安定化させる仕組み(ビルトインスタビライザー)という一面も持っている。

消費増税を契機に、一般政府の「取り分」は増加

さらに付加価値の直接的な構成項目である③生産・輸入品に課される税(除補助金)についても、これが増えれば、市場の価格調整メカニズムを通じ、①営業余剰・混合所得や②雇用者報酬など、民間部門の付加価値からの「取り分」は減ることになる。実際に③生産・輸入品に課される税(除補助金)の総額の動きをみるとつぎのようになる。

足許の税の増加は、その内訳をみると「付加価値型税」の増加によるものであり、2014年の消費税率の引き上げが影響を与えていることは明らかである。上述した「再分配」の逆噴射に加え、消費増税を契機とした③生産・輸入品に課される税(除補助金)の増加により、対名目GDP比でみた一般政府の投資超過幅も縮小しているものと考えられる。
現在は雇用者報酬が堅調に推移しているものの、「再分配」の逆噴射が続く中、今後、生産が減少し雇用者報酬も減少に転じることとなれば、家計の景況感は一挙に悪化、実質消費のさらなる抑制にもつながるだろう。生産をめぐる昨今の情勢は、雲行きの怪しいものとなっている。重ねて繰り返すが、今後の消費税率の引上げスケジュールについては、再考する必要がある。

*1:貯蓄投資バランスは、再び貯蓄過剰の方向へ - ラスカルの備忘録

*2:個人企業を含む。以下同様。

*3:可処分所得は、「現物社会移転」の純受取分を含まない通常ベースの「可処分所得」とする。

*4:⑦については、公的年金制度に係る負担の増加によるものと想定される。

*5:http://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/index.html