消費者物価(生鮮食品を除く総合、コア)と所定内給与(規模30人以上、概ね基本給に相当)の水準比較の推移を更新した。所定内給与は、月半ばに公表される確定値では、パートタイム労働者構成比が上昇することで下方修正されることが多く、現在公表されている速報値は上方バイアスを持つと考えられるため、先月の確定値におけるパートタイム労働者構成比変化の寄与度をもとに推計した予測確定値を用いる。
先月掲載したグラフから、所定内給与は11月の確定値に更新し、あわせて12月分の数値を追加しているが、前回時点よりも給与が停滞したため、グラフには、基準線よりも物価が上昇する方向へ動く傾向がみられる。これは、貨幣の購買力を基準とする実質的な給与が減少したことを意味するが、一方では、先日のエントリーでみたように、雇用は堅調に増加している。
実質的な給与の減少は、企業においては、マンパワー当たりの実質的な人件費コストの減少を意味するため、雇用面にはプラスの効果を与えるが、家計においては、消費を抑制する効果を持つ。実際、勤労者家計の消費支出はこのところ停滞し、実質の前年比では3カ月連続で減少している*1。
賃金は、所定外給与やボーナスなど景気に感応的な構成要素が増加したものの、非正規雇用比率の上昇による引き下げ圧力が大きく、全体としての上昇幅は小さい。特に、所定内給与については、前年比での減少が続いている。物価の上昇が続く中で、今月から始まった春闘の動向に注目が集まるが、非正規雇用比率の増加幅に明らかな変化がみられない限り、少々賃上げが実現しても、平均賃金を大幅に増加させることは難しいものと考えられる*2。
また、実質的な給与の低下は、消費への影響が少ない限りでは、そう問題視されるものではないが、このところの勤労者家計の動向は懸念材料である。こうした中、4月以降の消費税の引き上げが家計にどのような影響を与えるか、注視すべきところとなる。
*1:グラフは名目の消費支出の前年比。また、二人以上の全世帯では、実質でみても、引き続き増加している。