前稿では、統計の結果をもとに、以下の二つの結論を導いた。
- 中高年層の高学歴化は今後さらに進む。このことは企業に対し単位労働コストの上昇という形で影響。現在の賃金水準を維持する上で、コスト上昇分に見合う労働生産性の増加が必要。
- 25~29歳台の賃金に対する中高年層の相対的な賃金低下は、世代ごとにみれば、就職氷河期以降もさらに進む。
最初の結論は、企業の雇用・賃金管理に係る予測し得る課題であり、二つ目の結論は、これまでの傾向からの予測である。労働生産性を高めるには技術革新や資本装備率の(適切な)向上が必要であり、(労働生産性の増加が望めず)単位労働コストの引き下げが必要となれば、働く者の納得を得る上で、賃金の(職務カテゴリーごとの生産性に応じた)個別化が進むとも考えられる。
一方、上述の結論から、25~29歳台の賃金は中高年の賃金と比較し相対的に上昇しているとも指摘できる*1。前々稿にて指摘した高学歴ならぬ「高偏差値」層の若年者にみられる一般的な新卒者とは異なる入職傾向は、日本の雇用システムに「複線型」の仕組みをもたらす「兆し」ともとれ、また若年者の賃金が相対的に上昇する方向性とも整合する。
*1:若年者の中高年に対する希少性を反映する傾向ともとれる。