備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

金融・保険

安達誠司「円の足枷 日本経済「完全復活」への道筋」

円の足枷―日本経済「完全復活」への道筋作者: 安達誠司出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2007/02/01メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 37回この商品を含むブログ (21件) を見る序章 日本経済を混迷させたものは何か スヴェンソンは、①一定の上昇ト…

橘玲「マネーロンダリング入門 国際金融詐欺からテロ資金まで」

マネーロンダリング入門―国際金融詐欺からテロ資金まで (幻冬舎新書)作者: 橘玲出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2006/11/01メディア: 新書購入: 13人 クリック: 135回この商品を含むブログ (89件) を見るコメント 著者は、マネロン、地下経済、商取引に付随…

日銀政策決定会合

今回の情報統制の厳しさは、これまでの報道振り(先月と異なり、ほとんど何も情報が出てこない)からよく伝わってきます。 「日銀、0.25%の利上げ決定」、これ自体は想定内かも知れませんが、「8対1の賛成多数」というのは正直驚きでした。しかも「反対は…

ソルベンシー・マージン比率の算出基準等に関する検討チーム(金融庁)

ソルベンシー・マージン比率とは、「保険金等の支払い能力の充実の状況が適当であるかどうかの基準」と定義されており、計測された通常の予測を超えるリスク(実際の計算では、これに1/2を乗じる)に対して、自己資本、危険準備金、異常危険準備金等の支払余…

加藤涼「現代マクロ経済学講義 動学的一般均衡モデル入門」(その3)

現代マクロ経済学講義―動学的一般均衡モデル入門作者: 加藤涼出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2006/12/01メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 195回この商品を含むブログ (34件) を見る第4章 労働市場の不完全性−労働市場のサーチと産業構造調整− …

加藤涼「現代マクロ経済学講義 動学的一般均衡モデル入門」(その2)

現代マクロ経済学講義―動学的一般均衡モデル入門作者: 加藤涼出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2006/12/01メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 195回この商品を含むブログ (34件) を見る第3章 資本市場の不完全性−流動性の理論と景気変動−*1 「資本…

新春経済系ブログかくし芸大会(まとめ その2)

こちらをご覧ください。加藤本を巡る議論でしたが、いつの間にか、銅鑼衣紋さんと韓リフ先生の「経済」学の語源を巡る議論となっております。図らずもか、銅鑼衣紋さんの「経済学」観が垣間見られるところが見所でしょうか。 また、ss氏は経済学は「経世在民…

新春経済系ブログかくし芸大会(まとめ その1)

こちらをご覧くださいww*1 ところで、この議論の肝となっているところは、 「偉い人がDSGEモデルの世界観を理解しているということは、若手の士気を高める」との加藤氏の指摘に対し、リフレ政策を支持するDSGEモデルを理解している植田氏が「日和見で理論…

加藤涼「現代マクロ経済学講義 動学的一般均衡モデル入門」(その1)

現代マクロ経済学講義―動学的一般均衡モデル入門作者: 加藤涼出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2006/12/01メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 195回この商品を含むブログ (34件) を見る第1章 動学的一般均衡モデル−マクロ経済学の再出発− 「通常」…

加藤涼「新しいISLM/ADAS分析−動学的一般均衡モデルの紹介」

http://www.ryokato.org/genmac/NISLM.pdf 原油価格上昇率の変化がインフレ率の変化に与える影響(感応度)をパス・スルー率と呼ぶが*1、その値は長期的にみて現在かなりの低水準。この理由として、一般には、①原油依存度の低下、②原油価格が製品価格へ転嫁…

北浦修敏、坂村素数、原田泰、篠原哲「構造的失業とデフレーション−フィリップス・カーブ、UV分析、オークン法則−」(PRI Discussion Paper Series)

1.フィリップス・カーブによる分析 構造的失業を分析する最も基本的な方法であるNAIRU型のフィリップス・カーブ dp(t)=E[dp(t)]+b・[U(t)-U*(t)]+サプライショック…(1) U:失業率 U*:構造的失業率 の理論的説明については、Friedmanの他にもニュー・ケイ…

田谷禎三「フィリップス・カーブのフラット化」(大和総研)

フィリップス・カーブ(こちらはx軸にGDPギャップとする)のフラット化は世界的に見られる現象で、IMFはその要因としてグローバリゼーションを挙げるが、日本においてはそれに加え、労働市場の構造変化(非正規雇用比率の上昇等)がインフレ率をさらに抑制し…

熊野英夫「フリードマン教授が遺した宿題〜不安定なフィリップス・カーブの中で〜」(第一生命経済研究所)

本稿の内容 フリードマン教授の自然失業率仮説は、失業率とインフレ率のトレード・オフの関係を示すフィリップス・カーブは短期的にしか成立しないというもので、政策的なインプリケーションとしては、金融政策によって雇用拡大を目指しても長期的にはインフ…

福永一郎「資本市場の不完全性下の金融政策」(日銀レビュー)

マクロ経済学の標準的な考え方では、実体経済が資産価格等の金融面を規定するという方向性が主に考えられ、逆のメカニズムはあまり考慮されない。これは「資本市場の完全性」(完全な情報開示や公正な取引が約束されるなど、理想的な条件を満たす資本市場が…

デービッド・ローマー「上級マクロ経済学」(その2)

上級マクロ経済学作者: デビッドローマー,David Romer,堀雅博,南条隆,岩成博夫出版社/メーカー: 日本評論社発売日: 1998/02メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 26回この商品を含むブログ (12件) を見る第1章 ソロー成長モデル(続き) 1.4 貯蓄率の変化が…

デービッド・ローマー「上級マクロ経済学」(その1)

上級マクロ経済学作者: デビッドローマー,David Romer,堀雅博,南条隆,岩成博夫出版社/メーカー: 日本評論社発売日: 1998/02メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 26回この商品を含むブログ (12件) を見る第1章 ソロー成長モデル 1.2 諸前提 ソロー・モデル…

藤木裕「開放経済下での金融政策入門」(日銀レビュー)

為替相場の決定要因については、①国際的な財・サービスからの取引需要、②国際間の資産選択需要、③国際的な財取引に働く長期的な裁定、等が指摘される。③によれば、為替相場は、長期的には、両国の物価水準を調整するように決まる(購買力平価説)。 (マンデ…

原尚子、長野哲平、上原博人、木村武、清水季子「経済見通しの作成における政策金利の前提」(日銀レビュー)

金融政策の効果が実体経済や物価に影響が及ぶまでにはラグが存在するため、政策運営はフォワード・ルッキングであることが必要。このため、金融政策運営においては、経済見通しを作成することが不可欠であり、その際、自らの操作変数である政策金利について…

伊藤智、猪又祐輔、川本卓司、黒住卓司、高川泉、原尚子、平形尚久、峯岸誠「GDPGAPと潜在成長率の新推計」(日銀レビュー)

潜在GDPとは、中期的に持続可能な経済の成長軌道であり、現存する経済構造を前提とした一国経済の供給力を表す。GDPGAPは、実際のGDPが潜在GDPからどの程度乖離しているかを示したもの。 コブ・ダグラス型生産関数 Y=(1-a)・K+a・L+TFP…② a:労働分配率 (Y,K…

安達誠司「脱デフレの歴史分析 「政策レジーム」転換でたどる近代日本」(その2)

脱デフレの歴史分析―「政策レジーム」転換でたどる近代日本作者: 安達誠司出版社/メーカー: 藤原書店発売日: 2006/05メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 68回この商品を含むブログ (26件) を見る第6章 後期松方財政はなぜ、政策レジームの転換に成功した…

日本銀行「金融市場調節方針の変更について」

金融市場調節金利について、「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.25%前後で推移するよう促す」とすることに変更。なお、報道によれば、「連続利上げ意図せず」とのことであるが、市場との対話ではその言葉が「信認」されているかが重要な要素で…

白塚重典「金利の期間構造と金融政策」(日銀レビュー)

1.はじめに 金利の期間構造を介した金融政策と短期・長期金利の関係は、期待仮説とフィッシャー方程式に立脚。期待仮説では、期間の長い金利は、その間の予想短期金利の平均に、不確実性への対価であるターム・プレミアムを加えたものに等しくなる。 短期…

安達誠司「脱デフレの歴史分析 「政策レジーム」転換でたどる近代日本」(その1)

脱デフレの歴史分析―「政策レジーム」転換でたどる近代日本作者: 安達誠司出版社/メーカー: 藤原書店発売日: 2006/05メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 68回この商品を含むブログ (26件) を見る第1章 基本コンセプトとしての「政策レジーム」の重要性 経…

マクロ経済学と金融政策に関するエントリー一覧

日銀レビュー・シリーズ等 2005-03-31 鵜飼博史、鎌田康一郎「マネタリー・エコノミクスの新しい展開:金融政策分析の入門的解説」(日銀レビュー) 2005-04-11 加藤涼、川本卓司「ニューケインジアン・フィリップス曲線:粘着価格モデルにおけるインフレ率…

関連して、再びecon-economeさんによる同論文の整理

日銀が現行の量的緩和策をより進めて、直接的に物価安定にコミットし、早期にリフレ政策(物価水準目標政策)の導入を進めていくのが好ましい。ある一定の目標物価幅の中での裁量政策こそ市場の理解に裏打ちされた政策、責任を持ったセントラルバンカーとし…

三尾仁志「新しいケインズ経済学の下での最適金融政策分析:裁量とコミットメントの意義」(日銀レビュー)

新しいケインズ経済学では、経済構造は、①総需要面の関係であるIS曲線:x(t)=E[x(t+1)]-s( r(t)-r*(t) ), r(t)=i(t)-E[dp(t+1)]*1…(1) x:GDPGAP, r*:自然利子率*2 、②総供給面の関係式であるフィリップス曲線:dp(t)=E[dp(t+1)]+b・x(t)+pshock(t)…(2) の2…

関連して、econ-economeさんによる同論文の整理

現下の不確実性の程度を小さくすることがまず必要であり、そのためには、虚心坦懐に不確実性をもたらす各要因を精査することが必要。需要側および供給側のショックに対応した中央銀行の政策運営におけるコミットメント政策の有用性に加えて、本論文の含意か…

武藤一郎、木村武「不確実性下の金融政策」(日銀レビュー)

外生ショック(原油価格、世界経済の変動等)、マクロ経済の構造(政策乗数、GDPGAPの計測誤差等)、さらには社会の経済厚生関数など、様々な不確実性が存在する場合に、どのような政策対応を行うべきか、について、理論的な考察を行っておく必要がある。 金…

「「保険業法施行規則の一部を改正する内閣府令等(案)」に対するパブリックコメントの結果について(損害保険会社におけるIBNR備金の積立ルール整備等)」(金融庁)

「リフレ政策の検討 その8」(労働、社会問題)へのコメント

以前の議論の続き。