備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

2007-01-01から1年間の記事一覧

大賀智子「女性労働力率M字カーブの上昇要因−年齢階級で異なる労働選択の背景−」(JCER REVIEW)

コメント ADLモデルによる推計の結果、女性の労働力率に影響を与えている要因は、(1)M字カーブの底にあたる30〜34歳では機会費用やライフスタイルの変化などの構造要因であるのに対し、(2)40歳以上では景気循環要因。(2)については、これらの層における非正…

橋本健二「階級社会 現代日本の格差を問う」

階級社会 (講談社選書メチエ)作者: 橋本健二出版社/メーカー: 講談社発売日: 2006/09/09メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 3人 クリック: 57回この商品を含むブログ (36件) を見るコメント 本書において最も注目に値するのは、映画や漫画といった大衆文…

岩田正美「現代の貧困−ワーキングプア/ホームレス/生活保護」

現代の貧困―ワーキングプア/ホームレス/生活保護 (ちくま新書)作者: 岩田正美出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2007/05/01メディア: 新書購入: 13人 クリック: 158回この商品を含むブログ (121件) を見る第1章 格差論から貧困論へ 日本には格差社会論はあ…

ジョン・マクミラン「市場を創る バザールからネット取引まで」

市場を創る―バザールからネット取引まで (叢書“制度を考える”)作者: ジョンマクミラン,John McMillan,瀧澤弘和,木村友二出版社/メーカー: NTT出版発売日: 2007/03/01メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 178回この商品を含むブログ (57件) を見るコメント …

2007年6月データによる更新

完全失業率は引き続き改善し、ついに3.7%。しかし、物価上昇率は引き続きマイナス圏内で横ばいを続けている。

ロバート・フランク“Falling Behind”(その2)

Falling Behind: How Rising Inequality Harms the Middle Class (The Aaron Wildavsky Forum for Public Policy)作者: Robert H. Frank出版社/メーカー: University of California Press発売日: 2007/07/02メディア: ペーパーバック購入: 1人 クリック: 4回…

ロバート・フランク“Falling Behind”(その1)

Falling Behind: How Rising Inequality Harms the Middle Class (The Aaron Wildavsky Forum for Public Policy)作者: Robert H. Frank出版社/メーカー: University of California Press発売日: 2007/07/02メディア: ペーパーバック購入: 1人 クリック: 4回…

労働生産性の企業規模間格差拡大の要因

1.資本装備率の企業規模間格差の拡大。ただし、資本装備率だけでなく資本生産性もまた規模間格差の拡大に大きく寄与しており、これだけで説明しきることは困難。(注 ここでいう資本装備率は、従業員1人あたりの土地を除く有形固定資産であり、厳密な意味…

アラン・ド・ボトン「旅する哲学−大人のための旅行術」

旅する哲学―大人のための旅行術作者: アラン・ドボトン,Alain De Botton,安引宏出版社/メーカー: 集英社発売日: 2004/04メディア: 単行本購入: 7人 クリック: 97回この商品を含むブログ (14件) を見る※このエントリーは現在書き直し中であるため、公開を一時…

内田樹「格差社会って何だろう」

「格差社会」というのは、格差が拡大し、固定化した社会というよりはむしろ「金の全能性」が過大評価され、その結果「人間を序列化する基準として金以外のものさしがなくなった社会」のことではないのか。 経済的格差、或いは「下流」であることの意識が、人…

桐野夏生「OUT」

OUT(アウト)作者: 桐野夏生出版社/メーカー: 講談社発売日: 1997/07メディア: 単行本 クリック: 21回この商品を含むブログ (53件) を見るコメント 「OUT」の世界には、やむにやまれぬ理由から深夜のパート労働を強いられる女性たちが登場する。この単調か…

袖川芳之・田邊健「幸福度に関する研究〜経済的ゆたかさは幸福と関係があるのか〜」

主観的幸福度(=「国民生活に関する世論調査」における「生活満足度」)は、周囲との相対的比較で判断されている可能性が高く、現在の主観的幸福度と比較して論じることには無理がある。景気変動との関係では、規則的な連動はみられないものの、急激な経済…

野口旭「グローバル経済を学ぶ」

グローバル経済を学ぶ (ちくま新書)作者: 野口旭出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2007/05メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 18回この商品を含むブログ (34件) を見るコメント グローバル経済について、「確実ではあるが狭い立脚点」に基づき問題点を分…

小川和也「鞍馬天狗とは何者か 大佛次郎の戦中と戦後」

鞍馬天狗とは何者か―大仏次郎の戦中と戦後作者: 小川和也出版社/メーカー: 藤原書店発売日: 2006/07メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (6件) を見るコメント 大佛次郎の「戦争責任」を未再刊の作品群を読み解くことによって描き出し、その…

ティム・ハーフォード(遠藤真美訳)「まっとうな経済学」

まっとうな経済学作者: ティム・ハーフォード,遠藤真美出版社/メーカー: ランダムハウス講談社発売日: 2006/09/14メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 66回この商品を含むブログ (72件) を見るコメント 原題は"The Undercover Economist"。「限界」概念や特…

小池和男「仕事の経済学(第3版)」

仕事の経済学作者: 小池和男出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2005/02/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 38回この商品を含むブログ (22件) を見るコメント 小池和男の議論は、日本の長期雇用システム、特にその中で、大企業ブルーカラー層に特…

労働力人口変動の要因分解−構造要因抽出の試み

06/06/05付けエントリーでは、労働力人口(就業者+失業者)の変動について、(1)人口の高年齢化に伴う効果(人口構成要因)、(2)労働力需給の変動に伴う効果(労働市場要因)に分解したグラフを掲載した。この(2)の効果は、労働市場の環境に応じ、就業意欲を…

労働分配率の「適正水準」について

労働分配率に関して、かつて以下のようなエントリーを立て、その「適正水準」を決めることは、短期的にも長期的にもできないと論じた。 労働分配率をめぐるいくつかの考察 しかしながら、過去のデータから、長期トレンドを抽出することで、それを概ねの「適…

橘木俊詔「格差社会 何が問題なのか」

格差社会―何が問題なのか (岩波新書)作者: 橘木俊詔出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2006/09/20メディア: 新書購入: 5人 クリック: 170回この商品を含むブログ (133件) を見るコメント 著者の格差問題に関する議論については、前著*1においてみられたよう…

井上昭一・藤井光男編著「現代経営史 日本・欧米」

現代経営史―日本・欧米 (叢書 現代経営学)作者: 井上昭一,藤井光男出版社/メーカー: ミネルヴァ書房発売日: 1999/05メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る 第3章「構造不況以降における日本型企業社会」まで。1950年代半ば以降…

内田樹「下流志向 学ばない子供たち 働かない若者たち」

下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち作者: 内田樹出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/01/31メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 96回この商品を含むブログ (672件) を見る 下記のコメントについては、十分に議論が整理されていないにも拘わら…

下流社会論の陥穽−社会思想編

不安型ナショナリズムの時代―日韓中のネット世代が憎みあう本当の理由 (新書y)作者: 高原基彰出版社/メーカー: 洋泉社発売日: 2006/04メディア: 新書購入: 2人 クリック: 139回この商品を含むブログ (77件) を見る 社会の二極化、特に、若年層に広がるフリー…

下流社会論の陥穽

下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)作者: 三浦展出版社/メーカー: 光文社発売日: 2005/09/20メディア: 新書購入: 2人 クリック: 125回この商品を含むブログ (663件) を見る 三浦展「下流社会」では、内閣府「国民生活に関する世論調査」(以下、単…

佐藤俊樹「不平等社会日本 さよなら総中流」

不平等社会日本―さよなら総中流 (中公新書)作者: 佐藤俊樹出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2000/06/01メディア: 新書購入: 1人 クリック: 54回この商品を含むブログ (108件) を見るコメント 格差問題に関して、本書が主たる関心を呼んだのは、年功序列…

私家版「幸福の政治経済学」の試み(その4)

※このエントリーは、結論部分を除き非公開としました。これとは別に、一般に公表されているマイクロ・データを使用した分析をおこなっており、こちらについては、機会があれば公開します(02/20/09)。今後の分析の方向性 ここまでみてきた点で、特に大きな…

私家版「幸福の政治経済学」の試み(その3)

※このエントリーは、結論部分を除き非公開としました。これとは別に、一般に公表されているマイクロ・データを使用した分析をおこなっており、こちらについては、機会があれば公開します(02/20/09)。 ここから導かれる含意は次のようなものである。 男性と…

私家版「幸福の政治経済学」の試み(その2)

※このエントリーは、非公開としました。これとは別に、一般に公表されているマイクロ・データを使用した分析をおこなっており、こちらについては、機会があれば公開します(02/20/09)。

私家版「幸福の政治経済学」の試み(その1)

ブルーノ・フライ、アイロス・スタッツァー「幸福の政治経済学」やS・レヴィット、S・ダブナー「ヤバい経済学」には、社会生活に関係する指標を規定する要因を一般化線型モデル(GLM)*1を利用した回帰分析によって分析するという共通点がある。このような…

格差の景気要因と米国の格差拡大の関係(Economics Lovers Live)

同じくこの問題への回答振りを考えていたのでメモ。景気拡大が継続し市場の効率性が確保された米国の格差拡大は、長期不況が継続する日本よりも大きいことの理由如何との問立てには、両国の再分配政策や雇用慣行、企業内での付加価値配分の違い等制度面から…

ロナルド・ドーア「誰のための会社にするか」

誰のための会社にするか (岩波新書)作者: ロナルドドーア,Ronald Dore出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2006/07/20メディア: 新書購入: 5人 クリック: 46回この商品を含むブログ (29件) を見る第1章 コーポレート・ガバナンス―「治」の時・「乱」の時 米国…