備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

2006-01-01から1年間の記事一覧

身近なところでの「経済学」批判

私事だが、自分の周囲にはかなり似通った形で「経済学」批判を試みる徒が多く、その手の批判は、きまって「経済学者は、理論と現実が異なる場合に、現実をおかしいというが、それは間違っている。」(意訳)といった形をとることが多い。そういう類には、微…

安達誠司「脱デフレの歴史分析 「政策レジーム」転換でたどる近代日本」(その2)

脱デフレの歴史分析―「政策レジーム」転換でたどる近代日本作者: 安達誠司出版社/メーカー: 藤原書店発売日: 2006/05メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 68回この商品を含むブログ (26件) を見る第6章 後期松方財政はなぜ、政策レジームの転換に成功した…

日本銀行「金融市場調節方針の変更について」

金融市場調節金利について、「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.25%前後で推移するよう促す」とすることに変更。なお、報道によれば、「連続利上げ意図せず」とのことであるが、市場との対話ではその言葉が「信認」されているかが重要な要素で…

白塚重典「金利の期間構造と金融政策」(日銀レビュー)

1.はじめに 金利の期間構造を介した金融政策と短期・長期金利の関係は、期待仮説とフィッシャー方程式に立脚。期待仮説では、期間の長い金利は、その間の予想短期金利の平均に、不確実性への対価であるターム・プレミアムを加えたものに等しくなる。 短期…

「90年代の格差拡大の主因は何か?」に係る追記

75年以降のデータにより追加的に分析したところ、以下のような点を発見。これらをまじめに論述したら、小論文的なのが1本できそうな感じ。何分、Excelの分析ツールによる素人分析なので*1、御指摘等は歓迎します。なお、次回以降は、いつものペースに戻る予…

新記録, etc.

昨日は、ページビュー:2074、ユニークユーザー:1184(いずれもBlogpetのアクセス解析に基づく)でした。本日も、まだ、嵐は収まっていない模様... なお、これまで指摘を受けた問題点として、コメント欄にあるような、時系列解析上の問題がある。また、失業…

90年代の格差拡大の主因は何か?

06/22付けエントリーに関連して。格差問題については、①長期的にみたジニ係数の上昇傾向は、高齢化や単身世帯の増加を主因とするものであるが、②若年層における非正規雇用の増加は、将来的な格差拡大を懸念させる、というのが、この問題をめぐる世間的に概ね…

安達誠司「脱デフレの歴史分析 「政策レジーム」転換でたどる近代日本」(その1)

脱デフレの歴史分析―「政策レジーム」転換でたどる近代日本作者: 安達誠司出版社/メーカー: 藤原書店発売日: 2006/05メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 68回この商品を含むブログ (26件) を見る第1章 基本コンセプトとしての「政策レジーム」の重要性 経…

マクロ経済学と金融政策に関するエントリー一覧

日銀レビュー・シリーズ等 2005-03-31 鵜飼博史、鎌田康一郎「マネタリー・エコノミクスの新しい展開:金融政策分析の入門的解説」(日銀レビュー) 2005-04-11 加藤涼、川本卓司「ニューケインジアン・フィリップス曲線:粘着価格モデルにおけるインフレ率…

関連して、再びecon-economeさんによる同論文の整理

日銀が現行の量的緩和策をより進めて、直接的に物価安定にコミットし、早期にリフレ政策(物価水準目標政策)の導入を進めていくのが好ましい。ある一定の目標物価幅の中での裁量政策こそ市場の理解に裏打ちされた政策、責任を持ったセントラルバンカーとし…

三尾仁志「新しいケインズ経済学の下での最適金融政策分析:裁量とコミットメントの意義」(日銀レビュー)

新しいケインズ経済学では、経済構造は、①総需要面の関係であるIS曲線:x(t)=E[x(t+1)]-s( r(t)-r*(t) ), r(t)=i(t)-E[dp(t+1)]*1…(1) x:GDPGAP, r*:自然利子率*2 、②総供給面の関係式であるフィリップス曲線:dp(t)=E[dp(t+1)]+b・x(t)+pshock(t)…(2) の2…

関連して、econ-economeさんによる同論文の整理

現下の不確実性の程度を小さくすることがまず必要であり、そのためには、虚心坦懐に不確実性をもたらす各要因を精査することが必要。需要側および供給側のショックに対応した中央銀行の政策運営におけるコミットメント政策の有用性に加えて、本論文の含意か…

武藤一郎、木村武「不確実性下の金融政策」(日銀レビュー)

外生ショック(原油価格、世界経済の変動等)、マクロ経済の構造(政策乗数、GDPGAPの計測誤差等)、さらには社会の経済厚生関数など、様々な不確実性が存在する場合に、どのような政策対応を行うべきか、について、理論的な考察を行っておく必要がある。 金…

大鹿靖明「ヒルズ黙示録 検証・ライブドア」

ヒルズ黙示録―検証・ライブドア作者: 大鹿靖明出版社/メーカー: 朝日新聞社発売日: 2006/04メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 90回この商品を含むブログ (65件) を見るコメント ライブドアや六本木ヒルズに関係する人間模様が、ジャーナリスト的な視点か…

田中秀臣「英The Economist誌での日本の不平等論争の紹介」

同誌は大竹さんの主張を支持してまして、規制緩和があってドライバーが賃金低下ながらも職をえたことが日本の所得格差を縮小しただろう、と書いてます。なぜならそうしないと彼は失業しただろうからと。同誌は基本的に雇用の流動化が日本経済を停滞から脱し…

手嶋龍一「ウルトラ・ダラー」

ウルトラ・ダラー作者: 手嶋龍一出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2006/02/28メディア: 単行本 クリック: 24回この商品を含むブログ (127件) を見るコメント 佐藤本に引き続き、外交・インテリジェンス物。北朝鮮、中国、台湾、日本の諜報を通じた位置関係、…

「これからの雇用戦略−誰もが輝き意欲を持って築く豊かで活力ある社会−」(労働政策研究・研修機構労働政策研究報告書 No.63)

報告書の内容 hamachan先生のお薦め。総論にあたる第2部第2章まで読了。ここまでの内容を自分なりに要約してみようと思うが、まず、雇用戦略を策定するにあたって、経済・社会環境の変化や我が国及び諸外国の雇用政策・雇用戦略について、以下のように整理…

柘植久慶「あの頃日本は強かった−日露戦争100年」

あの頃日本は強かった―日露戦争100年 (中公新書ラクレ)作者: 柘植久慶出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2003/10メディア: 新書 クリック: 3回この商品を含むブログ (4件) を見るコメント 日露戦争について、国力の劣る日本がロシアに勝利した要因を、両…

「真の失業率」と労働力人口の変動

BI@Kでは、毎月、「真の失業率」なる試算値を掲載している。これは、(1)完全失業率の分母である労働力人口について、労働力人口比率が0.64(直近ピークの1992年)であると仮定し、これを15歳以上人口に乗じた値とする、(2)完全失業率の分子である失業者…

石川達哉「年齢階層別に見た経済的格差の動向」(ニッセイ基礎研REPORT 2006.6)

長期的には、課税前所得のジニ係数は高まる傾向がみられるが、総世帯における年齢構成ウェイトを基準時点の値で固定し、各年齢階層における所得階層別の平均所得と世帯数割合については実績値を用いて、ジニ係数を試算すると、80年代以降の上昇傾向はみられ…

藤原総一郎「企業再生とM&Aのすべて」

企業再生とM&Aのすべて (文春新書)作者: 藤原総一郎出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2005/05/20メディア: 新書購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (6件) を見る1 今なぜ企業再生なのか 私的整理、法的整理などの企業再生システムは、企業のBS…

ダン・ブラウン(越前敏弥訳)「ダ・ヴィンチ・コード」

ダ・ヴィンチ・コード(上) (角川文庫)作者: ダン・ブラウン,越前敏弥出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2006/03/10メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 63回この商品を含むブログ (698件) を見るダ・ヴィンチ・コード(中) (角川文庫)作者: ダン・ブラウン,越…

(基本)ベバレッジ曲線

ちなみに、直近のベバレッジ曲線は以下のとおり。 92年〜06年2月までの月別数値の3カ月移動平均の推移。 雇用失業率(U)=失業者数/(失業者数+雇用者数) 欠員率(V)=(有効求人数−就職件数)/(有効求人数−就職件数+雇用者数)

太田智之「団塊世代の退職とその影響」(みずほリサーチ 05/01/06)

昨年来の雇用環境改善の背景には、景気回復による人手不足感の強まりに加えて、2007年から本格化する「団塊世代の大量退職」(2007年問題)への対応という企業側の事情。高齢者に対する定年延長や継続雇用制度は、労働力不足への懸念が強まる中、労働供給を…

テレビ東京報道局「ガイアの夜明け 闘う100人」

ガイアの夜明け 闘う100人(書き下ろし) (日経ビジネス人文庫)作者: テレビ東京報道局出版社/メーカー: 日本経済新聞社発売日: 2005/04/29メディア: 文庫 クリック: 16回この商品を含むブログ (28件) を見る

斎藤太郎「非正規雇用の拡大が意味するもの」(ニッセイ基礎研REPORT 06年5月)

厚生労働省「毎月勤労統計」によれば、98年半ば頃から続いていた常用労働者数は、04年に入って増加し始め、05年からは、(パートタイム労働者以外の)一般労働者についても増加し始めた。ただし、毎月勤労統計の一般労働者は必ずしも正社員とは限らない。総…

福井秀夫「厳しい解雇規制を見直せ 学歴偏重を助長 所得階層固定し、格差拡大」(日経新聞 04/28/06)

コメント 若年雇用問題と解雇規制に関しては、既に論じているので今さら触れる必要もないのだが、本記事の立論の仕方には極めて違和感を感じるので、あえて触れることにする。 この記事の立論によれば、①格差問題の隠れた大きな論点は学歴偏重→②本当の才能が…

稲葉振一郎、松尾匡、吉原直毅「マルクスの使いみち」

マルクスの使いみち作者: 稲葉振一郎,松尾匡,吉原直毅出版社/メーカー: 太田出版発売日: 2006/03/11メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 40回この商品を含むブログ (49件) を見るはじめに第1章 『解体と再生』その後 新古典派に対する批判として、企業をブ…

「「保険業法施行規則の一部を改正する内閣府令等(案)」に対するパブリックコメントの結果について(損害保険会社におけるIBNR備金の積立ルール整備等)」(金融庁)

「揺り戻し」としての備忘録

以下は、完全に自分向けの備忘録。 ある知り合いの働き方は、ほとんど寝ていないのではないかという位の「異常さ」(私からみれば)で、それでも休日も出払っていたりする。こうした働き方は、ワーク・ライフ・バランス的な見方からは、一律に壮年期の働き過…